44: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2012/09/12(水) 23:20:09.82 ID:N0EcB9ms0
帰りの時間はすぐにやってくる。伊原も千反田も親が迎えに来てくれるらしい。物騒な昨今、親としては心配なのだろう。そしてそれは俺にとってもありがたいことであった。理由について多くは語らないが。
二人の他にも親が迎えに来る生徒は多い。バスや電車を使うほどでもない距離の生徒が大半で、俺と里志もそれに該当はする。
伊原の親に乗っていかないかと打診されたが、どちらも首を横に振った。俺たちはこれから少々用事があるのだ。
去る車の後姿を見ながら、里志が俺に切り出す。
「さ、話ってなんだい、ホータロー」
「歩きながら話そう。それくらいの時間は、あるだろ」
俺はゆっくりと歩きだした。里志も隣で愛車のクロスバイクを押しながらついてくる。
白いトレンチコートは随分と長い間着ているものだが、神山市に住み続ける場合、これ一つで冬は十分だった。隙間風も少ないつくりになっている。
さく、さくと足の裏で雪が音を立てる。新雪だ。いつの間に雪が降ったのだろうか。
話す内容は決まっているのに、どう口火を切ったものかと一言目が出てこない。里志はそんな俺を見て苦笑し、
「傷害事件が気になるのかい?」
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