過去ログ - 姪「お兄ちゃんのこと、好きだよ?」男「……そう?
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5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:08:15.64 ID:f2pJeNOlo

「遠くにいきたいな」

 と、ときどき彼女はそんなことを言った。

「遠くってどこ?」

「月とか」

 その言葉に、僕たちは顔を見合わせて笑った。

 けれど実際、彼女はいなくなってしまった。

 きっと、夜明け前、霧雨に煙る街を出たのだ。
 街には人ひとりいなかっただろう。電線の上から何十もの鴉が彼女を見下ろしていたはずだ。
 手ぶらのまま、彼女は南に向かって歩き出す。近所の公園にでも行くような気軽さで。
 少し湿った空気に、少しだけ心を躍らせて。
 そしてずっと遠くについてから思うのだ。「いつのまにこんなところまで来たのだろう?」と。
 
 彼女はきっと一度も振り返らなかった。そして二度と戻らないだろう。
 旅立ちの日、彼女の姿を見たという者、彼女がいなくなったことに気付いた者は、ひとりもいなかった。
 ただのひとりだっていなかった。
 僕はその日、彼女のことを思い出しもしなかった。




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