279: ◆axh.jP1Twpjg[saga]
2012/09/29(土) 00:31:14.20 ID:i9ZekBNR0
その夜、俺は飯を食ってから家を出た。時間は6時半。十分間に合う時間だ。
もう辺りはすっかり暗い。田園地帯に入ると目立った灯りもなく、寂しい限りだ。
とはいえ今日は月が出ていた。
道を歩くには十分な光量だ。……自転車だが。
千反田の家が見えてきた頃、少し先の方に人影が見えた。
地元の農家の人だろうか。軽く会釈をして通り過ぎる。
……と思ったら、声を掛けられた。『折木さん!』。……ええっ!?
奉太郎「千反田!?」
える「そうです、わたしです。こんばんは、折木さん」
俺は自転車から降りて引き返す。それにしてもびっくりした。
奉太郎「どうしたんだ? 言われたとおり、お前の家に行くところだったんだが」
千反田は、えへへ、と恥ずかしそうに笑うと言った。
える「折木さんが来るのが待ち遠しくて。つい家の外まで見に来ちゃいました……」
奉太郎「ああ……」
まったくこいつは。わざとやっているのだろうか?
自転車を押してなけりゃ、思わず抱き締めてるところだ。
える「さ、行きましょう。折木さん」
奉太郎「ここじゃダメなのか?」
える「ダメです。場所が悪いです。家まで来てください」
場所が悪い? 俺は千反田が何を見せたいのか、何となく見当がつき始めていた。
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