過去ログ - 上条「迎えに、来たよ」フィアンマ「…うん」
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19: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2012/09/12(水) 00:51:08.13 ID:zLGd1hxm0

通学途中数度不幸に遭い、行きに手紙を出す事は出来なかった。
切手は貼ってあるっていうのに…。

「…はぁ、不幸だ」

遅れると面倒臭いので、帰りに出そうと決め。
補習の内容は不幸な事に『すけすけみるみる』。
いや、ほかにも勉強はあったけど、これが一番の鬼門だ。
そもそも上条さんはこの右手があるからどうにもならないような気がする。
能力の発言なんて既に諦めてるから、補習を何とか無くして欲しいところだ。



帰る途中ビリビリに絡まれ、今日は手紙を出しに行けなかった。
部屋の前、白い修道女が血だまりに倒れていた。



色々な事が目まぐるしくあったせいで訳がわからなかったが。
魔術とやらをそれとなく理解した。
自分の右手があれば、インデックスを助ける事が出来るかもしれない。
この色んなゴタゴタが済んだら、ミハイルに手紙を出しに行こう。
インデックスの事は、絶対に助ける。
ステイルや神裂を、苦しみから救ってみせる。


「ずっと待ち焦がれてたんだろ、こんな展開を! 英雄がやってくるまでの場つなぎじゃねえ! 主人公が登場するまでの時間稼ぎじゃねえ! 他の何者でもなく! 他の何物でもなく

! テメエのその手で、たった一人の女の子を助けてみせるって誓ったんじゃねえのかよ! ずっとずっと主人公になりたかったんだろ! 絵本みてえに映画みてえに、命を賭けてたった

一人の女の子を守る、魔術師になりたかったんだろ! だったらそれは全然終わってねえ!! 始まってすらいねえ!! ちっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよ!!   

―――手を伸ばせば届くんだ。いい加減に始めようぜ、魔術師!」




不穏な予感に、吐き気がした。
自分に関わるものかどうかはわからない。
敬虔でもないくせに、祈らずにはいられなかった。

「…当麻」

うっかりと紙で切った指、その傷口から溢れる血液を舐め、再び祈る。
どうか無事でありますように。
どうか無事でいてくれますように。
奇跡の加護が、どうか訪れますように。




七月二十八日。
全てのエピソード記憶を喪った上条当麻は、ぼんやりと病室の窓、その向こうの景色を見つめていた。
インデックスには誤魔化しの言葉をかけて噛まれた。地味に痛かった、と思い返す。
と、医者が入ってきた。『冥土帰し』とも呼ばれる学園都市一の名医だ。

「良かったのかい?」
「何が、ですか?」
「記憶の喪失…正確には脳のダメージの影響で過去の記憶を引き出せない状態だと、彼女に伝えなくて」
「良いんです。…俺、何だかあの子には、泣かないで欲しいと思ったから」
「彼女について知っている事は、思い出せないんだろう? 泣かないで欲しいと思う程の思い入れが、何処にあるというのかね?」
「どこって、そりゃあ決まってますよ ―――心に、じゃないですか?」

神の子が祈った奇跡は、非常に中途半端な効果をもたらした。
上条の記憶は、今、封印されていることと同義。
完全に喪われるよりはマシなのかもしれないが、今の彼は仮死状態と同じだ。

カエル顔の医者が出ていき、一人病室に取り残された上条は、再び風景を見る。
何か大切な事を忘れてしまっている気がした。思い出せない。
あの少女についてだっただろうか。違うような気もする。


何か、とても、とても大切なものを――――。


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