14: ◆0WipXNi8qk[saga]
2012/09/14(金) 21:38:59.49 ID:zSW76R5do
その時、急に夜空が俺の口をふさいだ。
「もごっ!?」
「……いい、言わなくていい」
俺は驚いて夜空の顔を見る。
夜空は……またあの無理をしている表情で微笑んでいた。
俺はそれを見たくない。
だから、無理矢理その手を払うと、再び口を開く。
「そんなのはダメだ。俺は今ここで」
「タカ」
夜空が、俺のことをかつてのあだ名で呼んだ。
そういえば、二人きりの時はそうやって呼ぼうと決めていた。
しかし最近は色々なことがありすぎて、お互いそれも忘れていたらしい。
もうすっかり暗くなってしまった部屋の中で。
夜空は俺と向き合って、真剣な目でこちらを見つめている。
「お前は、本当に答えが出たのか?」
「それは……」
「まさかとは思うが、同情で告白を受けようなどと考えていたんじゃないだろうな?」
夜空の言葉に俺は黙り込む。
心ではすぐに否定したかった。だが、言葉が出なかった。
夜空はそんな俺を見て、なぜか自嘲気味に微笑みを浮かべる。
「悪かったな」
「な、なんで夜空が……ソラが謝るんだよ」
「タカが答えを急ぐのは、私がこんな顔をしているからだろう?」
「……いや、そんな事はない」
「ふふ、そんな表情を見せられて信じられるとでも思っているのか?」
「…………」
「タカ、私のことは気にしなくていい。どれだけ時間をかけても構わないから、答えを見つけてくれ」
そうやってぎこちなく笑う夜空に、俺は耐えられなくなって口を開く。
全部、俺が悪いくせに。
「でも、お前だってつらいんだろ!? それを無視するなんてできねえよ!!」
「私はお前に同情で答えられる方がつらい」
「……っ!!」
「タカ、お前は少し私に優しすぎる。恋愛とは痛みを伴うものらしい。だから、お前はもう少し自分のことだけを考えていてくれ」
「…………」
「タカ」
「……分かったよ」
釈然としないが、本人がこれだけ言っているので俺は無理矢理納得する。
それと同時にいつまでも答えを出せない自分にイライラする。
世の中のカップル達は、みんなこういう悩みを乗り越えてきたのだろうか。
分からない。
恋人どころか、今まで友達すらろくに居なかった俺に分かりっこない。
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