過去ログ - 小鷹「安価で友達作る」 4
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48: ◆0WipXNi8qk[saga]
2012/09/15(土) 00:50:23.22 ID:gamhTDduo

朱音さんの質問に、一年生はなぜか俺のことを怯えた目で見る。
そして何かを言おうとするが、途中で止めてしまう。
言葉は喉まで出かかってきているようではあるが、そこまできて躊躇している様子だった。

「えーと、遠慮しなくていいぞ? 思ってることを言ってくれていいからさ」

「……で、でも」

「君は生徒会の事を思ってここまで来てくれたんだろ? それなら、そのことについて言ってくれればいいからさ」

その時だった。
俺の言葉を聞いて、一年生の震えが止まった。
俯いていて表情はよく見えないが、何かをブツブツと呟いているのが分かる。

一体どうしたのだろうか。
俺としては別にそこまで大したことを言った覚えはない。

それから少しして、一年生は顔を上げた。
その表情には先程の怯えはもうほとんどない。
代わりに何か吹っ切れた感じの表情になっていた。


「…………はい、分かりました」


その声も、震えは全く聞き取れない。
ハッキリとしたその口調は、先程までとはまるで別人のようだ。

確かに考えてみれば、理事長の言葉を聞いて立ち上がってくれた三人の内の一人だ。
それだけ生徒会への決意があってもおかしくないのだ。

一年生は、相変わらず何故か俺の方を見て口を開いた。

「……先程は、逃げ出してしまってすみませんでした。まさか、いきなり会うとは思わなくて……。
 でも、もう目が覚めました。絶対に逃げません。僕は一つの意志を持ってここに来ました」

「意志?」


「僕は、不良から生徒会を守りたかったんです」


空気が凍った。
葵はキョトンと首を傾げているが、朱音さんと火輪は不安そうに俺の方を見ていた。
たぶん俺がキレるとか思っているのかもしれない。

この一年生が言っている不良というのは十中八九俺のことだ。
最近は生徒会の手伝いをする事があるので、そこから出た噂かなんかを真に受けてしまったのだろう。

といっても、俺は怒ったりはしない。
元々そんな怒りやすい性格でもないし、そういう誤解をされるのも慣れている。
ただ、やっぱりちょっと傷つくが。いや、ぶっちゃけだいぶ傷つくが。

一年生はなんかもう、全てを諦めた顔で若干震えながら俺を見ていた。
例えるなら、自分の死期を感じて凶悪な敵に罵詈雑言を吐いた後みたいだ。

俺が口を開くと、一年生はビクッと肩を震わせた。
それでも、俺から目を逸らしたりはしない。

「……いいんじゃねえか」

「え……?」

俺の言葉に、一年生だけではなく朱音さんと火輪も驚いてこちらを見る。

「日向さんは……会長は君みたいに生徒会を思ってくれている人を望んでる。
 たぶんあの人がここに居たら『くはははは、面白いやつだ!』って気に入ると思う」

「あ……え…………?」

俺が笑ってそう言うと、一年生は呆然とした顔をする。
それもそうだろう、おそらくはこれからボッコボコにされるとか思ってただろうし。

ただ、俺は嬉しかった。
俺みたいなガラの悪い奴を目の前にしてここまで言える。
それはきっと、今まで辞めていった庶務の人達には決してできない。
それだけ、本気でこの生徒会を助けたいと思っているんだ。

この一年生なら日向さんを支えてくれる、俺はそう思った。


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