過去ログ - 【咲‐Saki‐】京太郎「俺がギャルゲ主人公?」華菜「笑えないし!」透華「その6!」
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893:うーむ…この辺り必要ないか? ◆LA9PoGiCNE[saga]
2012/10/04(木) 19:29:54.33 ID:7vBTUv5Io
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桃子「今度は私が大きな声で、先輩を捜し回ってみせますから! 大声で……世界中練り歩くっす!!」

ゆみ「――――そうなったら、なんとかしてその口を閉じさせないといけないな」

 階段脇のベンチの前で桃子がクルリと回り、意気消沈していたゆみをそう励ましていた。

睦月「………」

智美「どうしたー、むっきー」

 ゆみと桃子の語らいを邪魔しないようにとだけ言って、階段の段差に腰を下ろしていた智美が、顔を俯かせていた睦月に声を掛ける。

佳織「お、お腹でも痛いんですか!?」

 オロオロと顔を覗き込んでくる佳織に無言で首を振り、口を開く。

睦月「先輩達や……このカードをくれた人の対局を見て、私は出せるだけの力を振り絞ったのか……って。先鋒戦、本当に自分の持てる力を一つ残らず出し尽くせたのか、って……考えっ……たら……!」

 控室のモニターと、ついさっき大会のダイジェストで目撃した、全カード中五枚しかないレアカードを譲ってくれた少年――京太郎の男子個人戦決勝を振り返り、はたして自分はそれに恥じない対局をできていたのか、と悩む。
 きっと、足元にも及ばない。
 智美と同じように階段の段差に腰を下ろし、膝に額を埋めるようにして顔を隠す。今頃になって、自分達は負けたのだという実感が湧きあがってきた。

佳織「そ、そんなことないですよー! 全力……全力でしたっ……!」

 佳織が慰めようと、ワタワタと身振り手振りで励ましてくるが効果はない。

睦月「ぅ……うぅぅぅ……グスッ……!!」

智美「ありゃりゃー……意外とむっきーは泣き虫さんだったんだなー」

 すぐ隣まで移動してきた智美が、睦月の頭を撫でながら笑う。

睦月「すみません、でした……すみません、すみません……!」

 普段、感情を表に出さないので分からなかったゆみの気持ち――――

 ここまでこれただけで十分……そう思っていたのに。悔しいよりも残念な気分だ……私はあの場で、終わらない祭りを楽しみたかったんだ。そして、行きたかった……みんなで、全国に――

 涙も浮かべず、淡々と桃子に語っていたゆみの姿が蘇り、また頭の奥が熱くなる。

智美「そだなー、みんなで行きたかったな全国。特に私とユミちんは……みんなと打てるのは今年が最後だったからなー」

睦月「――――――――」

 その言葉に、胸が締め付けられる。
 先鋒戦で、もっと自分が頑張っていれば。もっと、点棒を稼いでいれば……そんな「たられば」ばかりが浮かんでくる。
 そんな睦月の背中を擦ってやりながら、智美はやはり笑顔だった。

智美「それでも私達は楽しかったから。むっきーがそんなに気に病む必要はないのさー。どっちかっていうと、その気持ちをバネにもっと強くなってくれたら……それで十分だなー」

 いつもワハハと笑ってばかりの、部長の責務は全てゆみに任せきりで、部長らしいところなんて一度も見たことがない智美の本音を見た気がした。

睦月「…………部長」

智美「ワハハ、似合わないなー。やっぱりこーいうのはユミちんに任せた方がよさそうだ」

 睦月が泣きやんだのを確認して、パッと勢いよく立ちあがる智美。
 スカートの後ろを叩いて汚れを落としながら睦月を促した。

智美「さー、二人きりの世界に入り込んでるユミちんとモモと合流するぞー。閉会式が終わったら、超特急で帰宅だからなー」

佳織「あ、ま、待ってよ智美ちゃん〜」

 慣れないことをして恥ずかしかったのか、さっさと階段を下りていってしまう智美を追いかけて佳織が去る。

睦月「――――わかりました、部長」

 目じりに残った涙をぬぐい、立ちあがる。
 いつまでも泣いてなんていられない。

睦月「来年は……きっと……!」

 そのためにはまず、県予選団体に参加するためのメンバー集めが待っているのだが、とにもかくにもまずは気合。
 来年の県予選優勝を胸に、津山睦月は……走りだした。


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