36: ◆H5DcZ7AtN.[sage saga]
2012/10/04(木) 22:02:02.46 ID:QzcEIylDO
そうこうしている内に、マスケットの有効射程に最初の魔獣が捉えられる。
移動しながらでの射撃になってしまうが、精度は二の次だ。まずは、彼女に集中している魔獣の意識をこちらに寄せる。
それに集中砲火から脱すれば、彼女に反撃のチャンスが巡ってくるかもしれない。
「弱いものいじめは良くないわ。そんなに元気なら、私が相手してあげる」
マスケットを召喚。手に取り、狙いを定める。
ふと、違和感。
よく見ると、宙を舞う彼女の純白の羽根が黒く染まりつつある。もしかしたら限界が近いかもしれない。
そう思って、彼女に視線を逸らす。
そして、目を見開いた。
白かった翼が、夜を撒き散らしたような漆黒に変わっていたのだから。
白の翼が宙(ソラ)を舞うための物だとすれば、黒は天を切り裂くための物。
まさに“降臨”した彼女は、魔獣に肉薄した後、羽根を撒き散らす。すると、羽の一つ一つが魔獣を押しつぶしていく。
私がその光景に目を奪われている間に、弓を造り出したであろう彼女は、矢を番え、放つ。
放たれた矢は光の線となり、魔獣を討つ。
それらの動作を当たり前のようにこなすあの少女は、新人なんかではない。
年単位の経験を積んだベテラン。動きに無駄が見当たらない、まさにエレガント。
「一体、どうなっているの?」
ついさっきまでの白い少女を思い起こす。
まるで写真のネガとポジ──そんな彼女の変貌。
謎が謎を呼び、迷宮に閉じ込められてしまう。
そんな私を置いていくように、いつの間にか世界は色を取り戻していた。
121Res/66.91 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。