過去ログ - ほむら「アリゾナは」杏子「今日も暑い」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)
[sage]
2012/09/25(火) 06:23:07.20 ID:8Vh59mPCo
Intro
砂ばかりの荒れた大地を、一台のオートバイが走っていた。
そのバイクはとても大きく、そして奇妙な形をしていた。
ハンドルと前輪を繋げる部分、フォークと呼ばれる部分が異常に長く、操縦者が乗るための座席の位置はやたらと低い場所にあるし、マフラーはまるでブーメランのように湾曲している。
一抱えほどもあるオイルタンクに丸太のように太いタイヤ。シートの横には錆びたラジオや、いくつもの皮の袋をぶら下げて走るそれは、どかどかと大きな排気音を上げながら、地平線の果てまで真っ直ぐ伸びる道路に沿って、時速百キロほどで走り続けていた。
一匹の蠍を踏み潰して走り去るバイクのシートには、二人の人間が乗っていた。
一人は赤。一人は黒。色違いの革の上着と、色褪せてあちこちが裂けた揃いでジーンズを身につけていたが、フルフェイスのヘルメットをしているので、顔や髪型まではわからない。
大きなバイク図体を持つバイクと比べるととても小さく見えるのだが、後部座席に乗っているほうが背高だった。
二人の間に一切の会話はない。恐らく、するような会話がないからだろう。
それを代弁するかのように、荒野はどこまでも平坦で、見るべき物などろくになかった。
唯一変わった物を上げるとするならば、遙か遠くに見える赤茶けた色の大きな谷々と、長く伸びた道路に沿って並んだ工業的なテント群。
真っ白なタープに降り注ぐ、ぎらぎらとした光を隠す雲はどこにもない。
黄土色の地面は埃っぽく、方々には彩度に欠ける緑のサボテンと、時たま見かける傾きかけた道路標識。
そんな代わり映えのしない不毛の大地をバイクはひたすら駆けてゆくと、やがて地平線の果て先に、ようやく一つの変化が見えた。
高さ五メートルほどの細長い脚を持った大きな看板の中、カラフルな鳥の羽で彩られた冠を被ったインディアンが『コネクションシティへようこそ!』と言っている。
バイクは看板を通り過ぎると、慣性を使ってゆっくりと速度を落としていった。
そのまま小さな小道を曲がり、屋根の低い建物が並ぶ街角へと入っていこうとした途中で――ぶすん、と籠もった音を立てて急減速し、ぴたりとその場に停止した。
座席に座っていた二人は首を振りながら腰を上げ、エンジンやキックスターターを蹴っ飛ばしたりしていたが、バイクはうんともすんとも言おうとしない。
やがて二人は観念したのか、手でバイクを押して道端に寄せると、ぐるりと周囲を見渡した。
赤い上着がどこかを指さす。黒い上着がそっちを向いた。
革手袋の示す先には、《Rabit Foot》という文字と、目玉焼きと酒瓶の描かれた看板。
周りの建物に比べればいささかくたびれたなりをしたその建物に赤が駆け込んでいくのを見て、黒が小さく首を振りながら後を追っていこうとしたその時、
『WooooooW!!』
背後から獣の遠吠えが響き、黒はぐるりと振り向いた。
バイザー越しの視線の先。遠く遠く、砂原の強い風に吹かれて舞う砂埃の向こうに、一匹の獣がいた。
犬か狼に似たその姿。白い毛並み。輝く犬歯。
四本の脚で大地を踏みしめるその獣は、黄金の瞳に野性の輝きを灯し、真っ直ぐに黒の顔を見つめている。
どこか現実離れしたその光景。黒が小さくまばたきをした瞬間、ざあっと一際強い横風が吹き、濃い砂埃が視界を覆った。
黒が手袋の表面でバイザーを擦り、もう一度前を見たその時には獣の姿は消え去っていた。
それはまるで蜃気楼。あるいはたなびく煙のように。
黒が自らの疲れ具合を確認するように溜め息を吐くと、後ろの建物から大きな声が聞こえた。
『早く来い。二十五セント硬貨が欲しいんだ』
黒は苦笑いを零しながらゆったりとした動作でヘルメットを脱ぐと、そこに一人の妖精が表れた。
流れる黒髪とピンクのリボン。ほつれ髪を頬に張り付けた、月のようにきらめく美貌を持ったその少女は、ばさりと髪を掻き上げながら、《兎脚亭》――幸運の象徴をなぞった場所へと足を踏み入れた。
その砂まみれの街角には、白いサボテンの花が咲いている。
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]
2012/09/25(火) 06:23:32.94 ID:qeVyJ9RKo
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