過去ログ - ほむら「アリゾナは」杏子「今日も暑い」
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21: ◆2GQkBO2xQE[saga]
2012/09/26(水) 21:52:46.42 ID:tiLKgAlSo


「それにしても、なんも無いって言ってたわりには随分物保ちがよさそうじゃん」

「確かに、個性的な物が多いようね」

 倉庫の一番奥、高さ一メートルほどの樽の前で、トングを使ってボウルにピクルスを盛りながら杏子が言った。
樽の中には黄色っぽく変色した何かの漬け物が入っており、カビ臭い倉庫内の空気に混じった甘酸っぱい食用酢の匂いが、二人の空きっ腹をずきずきと刺激してくる。

 ほむらが薄暗い倉庫内を見渡すと、十メートル平米ほどの空間には実に様々な調度品達が置かれていた。
幅四メートルほどもある額縁付きの水彩画に、ガラスケースに入った磁器製の壺。
鷲やリスといった小動物の剥製に、奥には熊や野牛と思わしき動物達の剥製と見られる、布にくるまった巨大な固まり。
ほむらは美術品の鑑定眼など持ち合わせてはいないが、そうした物の多くが最低限度の額を持っており、その総量を合わせればかなり金額になることは想像出来た。

「ひょっとして、あのばあちゃん金持ち?」

「こんな僻地でわざわざ飲食店を経営するぐらいだから、副業ぐらいはあるかもね」

「わかった。若い頃はペンタゴンの女スパイだったんだ。コードネームは《ブラックウィドウ》。仕事に疲れて田舎で隠居生活を――」

「馬鹿なこと言ってないでさっさと――ッッ!?」

 妙に楽しそうに無駄話をする杏子をほむらがたしなめようとしたその刹那――空気を切り裂く鋭い旋風。
ほむらは本能的に脇へと飛ぶすさると、絹糸のような髪の毛がはらりと舞い落ち、剥き出しになったコンクリートの壁面に、何かがざくりと突き刺さる音。
その襲いかかってきた超高速の物体を、二人の超人的な動体視力は確かに捉えていた。

「……んだこりゃあ!?」

 ピクルスの入ったボウルを抱えたまま、杏子は怒りと困惑の混じった声を上げた。

 その視線の先、石壁に突き刺さっていたのは――鋼の凶器。
人の指先から肘までの長さほど柄を持つの、狩猟用の投擲斧だった。
刃先は完全に壁に埋まっているので、その刃渡りが実際にどれほどの長さなのかは推測するほかないとはいえ、
それだけの力で投擲された凶器が人体にどれほどの被害を与えるかについては想像するまでもないことだ。

「……ちっ! また厄介ごと?」

 ほむらは舌打ちしながら近くにあった樽に身を隠し、懐に隠し持っていたベルギー製の自動拳銃を手に取った。
そのまま半身を乗り出して、正体不明の攻撃者を視認しようとするが、倉庫内と外の明度差が激しく、逆光で相手がよく見えない。
しかし相手が何者で、どういう意図を持っていようとも、敵対的であることは間違いなく――ほむらは敵に対して情けは掛けない。
それが、例え魔法少女でもなんでもない、そこらの一般人だったとしてもだ。



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