過去ログ - ほむら「アリゾナは」杏子「今日も暑い」
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(埼玉県)
[sage]
2012/09/25(火) 06:25:13.16 ID:8Vh59mPCo
[Bluespring Teens]
「Hello anyone」
カラン、コロン、と呼び鈴を鳴らしてほむらが店に入ると、店内の様子は想像とはだいぶ違っているようだった。
まず思ったことは――とても広い。そして清潔。風変わり。本を読むには薄暗い。
もって第一印象は好感触。十点中なら九点出せると、ほむらはその店を大いに気に入った。
テキーラが香る店内で最初にほむらの目に付いた物は、店の天井近くに飾られた、一対の大きな野牛の角だった。
ほむらはこのコネクションシティに辿り着く前に道端を走る野牛たちを数多く見たが、これほど立派な角を持った物はまだ見ていない。恐らく、なかなかの値打ち物だ。
角の下には二列になった酒棚と、美しい光沢を持った黒檀のカウンター。映画のようにタンブラーを滑らせれば、すいすい横へと流れるだろう。
棚に並んだ瓶のほとんどはウイスキーだったが、その種類は実に豊富だった。
テネシー、バーボン、スコッチ、モルト、ライにコーンに――サントリー。異国の地では物珍しい漢字が書かれたその瓶に、言いしれない美しさを感じたほむらはひっそりと眼を細めた。
こちこちと音を立てて振り子を揺らす大きな柱時計の置かれた入り口近くには、七面鳥の羽で作られたカラフルなウォーボンネット(インディアン達の羽根飾り)や、なめらかな曲線を持つ石の数珠に銀細工。
幾何学的な模様が幾重にも縫い込まれた敷物と、見事な工芸品の数々で埋め尽くされていたが、それらの雑然とした空間を持ってなお、ビリヤード台やピンボールマシンを置けるほどの面積をそのダイニングバーは有していた。
「――おせぇよー!……ほら、早く!」
カウンターに人影を探していたほむらに、一足早く店に入っていた杏子が話しかけてきた。
ビリヤード台の脇にあるパイプ椅子の上に脱ぎ捨てられたヘルメットは砂塵でくすんだ窓から入り込む陽光を浴びて、室内に小さな光を投射している。
「早く……何を?」
「二十五セント!あたし、一ドル札しか持ってねぇんだよ。あんた細かいのいっぱい持ってたろ」
それを一体何に使うのかと聞こうとしたところで、ほむらは杏子が指さす物に気が付いた。
蛍光グリーンのライトで装飾された、骨董品のジュークボックス。
いくつかの部品がひび割れ、だいぶ老朽化が進んでいるようだったが、埃だけは被っていない機械のボタンを杏子はせわしなく連打していた。
「……いいけど、何を聞くの?」
「エリック・クラプトン」
「『いとしのレイラ』?いつも思うのだけど、あなた本当は幾つなの?」
「おっ、BBキングまであるじゃん。この店わかってんなー」
「いいわね。そっちにしましょう。どうせ私のお金だし」
「ドナ・サマーもいいね。……ま、そっちは後でいいかな、っと」
「……言っておくけど、あげるのではなくて貸すのよ……?」
二枚分の硬貨を手渡されるなりほむらのリクエストを無視した杏子に、ドスの利いた声をぶつけるほむら。
杏子はそんなことは知ったことじゃないとばかりに(実際、全く聞いていなかった)、ノイズの混じったギターリフに上機嫌で首を振り、七十年代の名曲を楽しみ始めた。
「――おや、申し訳ない。お客様が来てるとは知らなんだよ」
ジュークボックスから流れるブルースの音に気が付いたのか、カウンターの奥に掛けられた美しい毛糸のカーテンの向こうから老婆が姿を現した。
肩まで届く長い白髪を耳の両側で三つ編みにし、肌は赤みがかった濃い茶色。
年の頃は七十歳か八十ぐらいだが背筋はぴんと伸びていて、年を感じさせないきびきびとした動作で動く彼女は、これぞまさしくインディアンという、貫禄を持った老婦人だった。
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