過去ログ - ほむら「アリゾナは」杏子「今日も暑い」
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4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2012/09/25(火) 06:28:09.29 ID:8Vh59mPCo
「お邪魔しています、ミセス」
「こんな美人さんが、しかも二人もいらっしゃるとは嬉しいことだよ。今日はどんなご用だい?」

 老婦人はカウンターの下から取りだしたカーキ色のシンプルなエプロンを身につけながら、カウンターの向こうからうやうやしく頭を下げて一礼すると、柱時計が午後一時を告げる鐘を鳴らした。

「昼食をいただきたいのですが。……それと、出来ればバイクの修理を出来る場所を教えていただけませんか?」

 ほむらはささやかな笑みを浮かべながらカウンターに歩み寄り、極めて標準的な発音の英語でゆっくりと喋った。
彼女は英会話に通ったりして英語を身につけたわけではない。彼女の右手に光る銀色の指輪、魔法少女の証であるソウルジェムの力を借りれば、言語の壁など無いにも等しいというだけだ。

「トラブルかい?」

「簡単なエンジントラブルですが、年季が入ったバイクなので……手持ちの道具では直せそうにないようなんです」

「ううん……それなら、裏手にある『ガナーズ・スパナ』という店がいいね。この町一番のエンジニアさ。……もっとも、この町にある工場はそこだけだがねえ!」

「くすっ……。……ありがとうございます、ミセス」

「堅苦しいのはよしとくれ。ジョアンナ・ソフィー・スパイククロー。『アンおばさん』と呼んでくれ」

「光栄です、アンおばさん。私はほむら。暁美ほむら。どうぞ、ほむらと呼んでください」

 にこやかな笑顔を浮かべながら、二人はカウンター越しに握手を交わした。

「ホムラ。不思議な名前だね。日本人らしい、エレガントで、ミステリアスな響きじゃないか」

「ありがとうございます。……向こうにいるのは、佐倉杏子。私の友人です」

 ほむらが首だけで杏子に振り向くと、彼女はジュークボックスから移った興味の対象、ピンボールに夢中になっているところだったが、人から巻き上げた金で堂々と遊び呆けるその姿に小さからぬ怒りを覚えたほむらは、念波で彼女を怒鳴りつけた。

『遊んでないでこっちに来なさい!!!』
「……んがっ!?」

 ソウルジェムを介して送り出された大音響に、杏子が背中をびくりと震わせて飛び上がると、拍子にピンボールの操作盤から手が離れ、銀色の球体は筐体の下部へと吸いこまれていった。
その様を恨めしそうに横目で見ながら、ふらふらと千鳥足でカウンターに寄ってくる杏子。
ほむらは自然な仕草でジョアンナに右手を差し向けながら、じろりと杏子を睨み付けた。

「杏子。こちらはミセス・ジョアンナ=スパイククロー。アンおばさんとおっしゃるそうよ」

「……あ、あたしは佐倉杏子だよ。よろしくね、ばあちゃん。……てめぇ、後で覚えてろよ……?」

 杏子は誰の了解を得るでもなしに一本足のパイプ椅子に腰を下ろし、にじにじとほむらと足を踏みつけ合いながらくだけた挨拶をすると、アンはからからと笑い返した。

「キョウコ! これまた元気のよさそうなお嬢さんだ。きっと、たいそう食べるのだろうよ!」

「この子は並の男の倍は食べます」

「そりゃあ良かった。ここ最近は客がぱったり来なくてね。
孫娘も良く食うほうだけど、それでも材料が余って仕方がないんだ。今日はたくさんサービスさせてもらうよ」

 アンはそう言うと、レジの脇から店のロゴが印刷されたコルク製のコースターを出し、二人にゆっくりと背中を向けた。

「飲み物はどうするかね?まずは、一つばかりのサービスだ」

「あ、あたしはバーボ――」

「コーラを二つ」

「生憎、州法でペプシは禁止されててねえ。コカしかないけどいいだろうかね?」

「ビールなら、バドワイザーが――」

「構いません。お気遣いに感謝します」

 ほむらが小さく会釈をする前で、アンはカウンターテーブルの下に屈み込んでばたばたと何かを開閉させた。
数秒後に立ち上がったアンの手の中には、ひんやりとした冷気を纏う、コカ・コーラの瓶があった。


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