3: ◆kulmh3/sOI[sage]
2012/09/28(金) 11:11:38.86 ID:lw7TTrkb0
【雨子が家に男の家に滞在する編2】
>>2 の続き
「は〜。お前立つのも一苦労なのな。」
男は疲れ果てたような声を出して、雲に文句を言った。雲は歩くことすら精一杯で、男はそれを家まで支えて帰ってきた。
「ここが家だよ。」
「そう」雲は喋るのがめんどくさいので最小限の日本語の技術を脳内に住んでいる人間から学んだ。
雲にとっては家の中にいることがとても珍しい、と言うかあり得ないことだった。いつも見下ろしていた屋根の下にいるのだから。
なので珍しすぎて男に対応している場合ではないかった。人間さんからもらえる言語情報も気にしていられないほどだ。
「部屋が汚いのは勘弁な。」
男はそう言いながら部屋に散らかっている本やらCDやらを隅へ押しやった。だけど雲は聞いてない。
「あのさぁ…まあ聞いてないだろうけど、お前は何者だ?」
「雲よ。」
「え?」
男は何を言っているのか分からない、といった返事をした。それと、返事されたことにも戸惑っている。
「空に住んでたの。」
「は?」男は尚もよく分からないと言う声をだした。
(そ、そうなの…?)体の持ち主の人間さんも大分びっくりしている。
(でも、たしかにそうみたいね…空にいた頃の記憶が流れてくる…。)
「で、何の雲?」
「雨雲よ。」
「ああ、なるほどね。…通りで予報が外れるわけだ。」
とはいいつつも男はやはり信じられないようだった。雲なのに人間って…。
「この体も借り物よ。」
「借り物?」
「人間さんから無断で体を借りたわ。」
「なるほどね…、まあよくわからんけど…。」
男は理解に苦しむ、と言ったような顔だ。
「そんで、お前、名前は?」
「名前なんてないわ。」
「じゃあ、雨子って呼ぶわ。名前が無いってのも信じられんのだけど。」
男はそう言った。もう雨子の謎についてはあきらめているのだろう。
「雨雲だから、雨子な。…お前女の子だよな?」
「そうよ。」
「雲って性別あるの?」
「なんとなく、女の子がいい。」
「…自分の意志で決めていいものなのか…。」
多分駄目だ。もし雲が男の子だったら…と言っても体自体は女性っぽいし、雲に性別があるとは思えない。
そう考えると別にいいのかとも考えられる。
「俺の名前は男ね。」
「男。」
「よろしくな、雨子。」
「…。」
雨子は目を閉じていた。しかも寝息が聞こえる。
「ねたの!?」
男の驚きの声にもぴくりともせず、そのまま雨子は夢に落ちていったのだ。
「…俺も寝るか。」
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