過去ログ - 安価で女装ギャルゲー風SS part6 -SS速報VIP

過去ログ - 安価で女装ギャルゲー風SS part6

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193: ◆EEWQeQ.ZIg[saga]
2012/10/02(火) 23:10:24.40 ID:elaIqivC0
1、妹の部屋に行く

貴方は覚悟を決めて、妹の部屋に行く事にした。

……貴方がどうなろうと、あそこは妹が生きていた証だ。
妹の部屋を抜きにして、どうして妹との思い出を語れる。

貴方「……僕が出てくるまで、誰も入れないでよ」

使用人男「旦那様がお呼びになられた場合は、如何致しましょう」

貴方「適当に済ませておいて。僕の言葉だ」

使用人男「かしこまりました」

これで、邪魔はされない。

貴方は玄関を離れ、妹の部屋に向かった。

□―――――――――□
｜貴方の家・妹の部屋｜
□―――――――――□

部屋に入って、漂うのは埃の臭い。掃除はされている。きっと、毎日してくれているのだ。
だけど、絨毯や壁に、染み付いているのだ。誰もいない、そう言う臭いが。
……その中に、貴方は遠い思い出の匂いを感じた。記憶と鼻腔に漂う、妹の香り。

妹が使っていた机。妹が使っていたベッド。妹が呼んでいた本。妹が、妹が、妹が。
妹が「使っていた」、全ての物。生きていた証と、失われた証明。

貴方は震える脚で、絨毯を踏み締め、歩く。その度、貴方を包む、懐かしさと悲劇の感覚。

……いつだったか、妹は貴方を部屋に入れるのを嫌うようになった。
でも甘えん坊だから、よく貴方をこの部屋に招いていた。
だから、ここに染み付くのは妹と貴方。その日々が、明確に思い出される。

『お兄様！』

幻聴、極まれり。幼い妹が、貴方の事を呼ぶ声が聞こえた。

……思えば、貴方は妹に救われていた。
産まれた時から、貴方は空虚だった。恐ろしい話だが、そう言う人間。
そんな貴方に人間らしさを与えたのは、妹の存在。妹が、貴方の心を満たしていたのだ。

……だからこそ、失われたあの日、貴方は完全に空っぽになったのだ。
それでもようやく纏った衣は……ああ、妹の真似事か。
確証はない。ただ、考えていくと、そう思える。実際は違うのかもしれないが……もう、それでもいい。

ここにいると、満たされていた頃を思い出す。
……暫く、この感覚でいたい。幻であるのは百も承知。
それでも、貴方は今一度、あの感覚で満たされたかった。

……貴方は、暫く妹の部屋で過ごした。

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