4:◇qq7WYD933[saga]
2012/09/29(土) 18:01:31.40 ID:AlqVJj+S0
「前から思ってたんだけど梓ってさ、恋バナになると黙り込んじゃうよね。
その顔を見る限り、好きな人が居ないってわけじゃないよね?
もしかして、何か付き合うのに問題がある人に恋してるんじゃないの?
例えば……、掘込先生とか!」
予想外の中年男性の名前を出されて、私はどう反応していいのか迷った。
純、本気で言ってるのかな……?
真意を掴めない以上、私は軽く笑って「そんなわけないでしょ」と肩を竦めてみる。
掘込先生はいい先生だと思うけど、恋愛対象には全然ならない。
奥さんとお子さんの話を授業中にいつも聞かされてるしね。
「やっぱり?」と苦笑した後、
「だとすると……」って言いながら、純が口元に手を当てて首を傾げて唸り出した。
これから思い当たる候補を全部挙げてくつもりなのかな……。
だったら、私の好きな人について、詳しく分かってるって事じゃないのかも。
私は胸を撫で下ろす気分で、純のジャズ研の事に話を逸らそうと口を開いた。
単なる雑談なら、それくらいの事で話を逸らせるはず。
そう思ってたのに、純は私が何かを言うより先にその言葉を出していた。
「ひょっとして……、梓が好きなのって軽音部の先輩?」
そんなわけないでしょ!
って、すぐに返せばよかったんだと思う。
それが普通だし、それこそが私の取るべき普通の反応なんだから。
でも、私にはそれが出来なかった。
ただ顔を青くして、自分の身体から力が抜けていくのを感じて、泣きたくなった。
だって、純の言葉は一つも間違ってないんだから。
否定なんて、出来なかった。
これからの私達のためにも否定しなきゃいけなかったのに、
否定してしまったら自分の想いまで否定するみたいに思えて出来なかった。
これで純と私の関係が終わっちゃうかもしれないのに……。
思えば、憂は何となく私の好きな人に気付いていたから、純の話を止めていてくれてたんだと思う。
私が自分の想いを否定出来ない事を分かってたから、手助けしてくれてたんだ。
憂はそんな風に私を思いやってくれてたんだ……。
でも、今、私の傍には憂が居なくて、私は自分の想いを誤魔化し切れなくて……。
「えっ? 当たりっ?
梓の好きなの人って本当に軽音部の先輩なのっ?」
純が目を丸くして私を見つめる。
その視線に耐え切れなくて、私は純から顔を逸らしてしまう。
その行為で完全に私が軽音部の先輩の事を好きだって事が悟られてしまったはずだった。
同性の……先輩の事を……。
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