過去ログ - 削板「久し振りだな、百合子！」 -SS速報VIP

過去ログ - 削板「久し振りだな、百合子！」

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604:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/06(月) 16:53:44.61 ID:h1le+xXXo
「干椎茸とかある？」

「はい。」

「4つくらい水で戻して。戻した水そのまんまスープに使うから、もし料理用の水あるならそれ使え。」

「はいはーい。」

料理用というわけではないが、普段飲んでいるミネラルウォーターのボトルを開けて干椎茸をそこに浸した。俄に膨らんでいく傘が生き物みたいで、子供っぽいと言われるのかもしれないが、少年はこういうのを眺めるのが好きだった。多分隣の彼女だったら同じ光景を見ていても浸透圧がどうのと綿密に計算するのだろう。

「生生姜はなかったよな。チューブのやつあるか？」

「ほい。」

「水で戻した椎茸細切れにして、ひき肉、卵、醤油、生姜とこねこねして。はい肉団子。」

彼女曰くぱさぱさしがちな赤身挽肉も、椎茸の細切れを入れると幾らか食感が良くなるらしい。彼女は台所の下の戸棚を開けて、底の深い鍋を取り出した。

「人参とか、もやしとか白菜とか、手当たり次第鍋に入れるから、適当に切っとけ。」

「お前は？」

「にんにく潰してごま油で炒めて香り移す。そこに野菜入れてさっきの肉団子と椎茸の戻し汁でスープにする。」

「はーい。」

「もう一品くらい欲しいなァ。…あ、豆腐あったよな。」

彼女の優秀な頭脳は、少年の冷蔵庫の中身も完璧に記憶したらしい。スープ用の野菜を炒めながら、使えそうな食材を思い返す様子はいっそ哲学的ですらあった。

「揚げ出し豆腐とか嫌か？なるべくカロリー抑えるけど。」

「一応弁明するけど、全く油物食べないわけじゃないから、俺。」

「ベーシックなお出汁と腹にたまる餡かけとお酢使ったさっぱり系とどれがいい？」

「さっぱり一択。」

「シンプルな性格してンなァ。はいじゃあ醤油とお酢をお好みで混ぜ合わせて下さい。ポン酢でもいいけど。ちょっと味濃い方がオススメ。」

「豆板醤はないよなァ、唐辛子は？」

「ほい。」

「紅葉おろし作れ。」

「大根と一緒に摺ればいいんだっけ。あー何かピリ辛揚げ出し豆腐想像しただけでウマそう…。」

シンプルな味の豆腐に辛味を合わせるのを想像して、少年は高校生らしい食欲に襲われた。健康志向ではあるが、間違っても小食ではない。豆腐は良質なタンパク質の塊であるから、彼の嗜好とも矛盾しないわけであるし。

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