過去ログ - まどか「杏子ちゃん、それはちょっと食べすぎじゃない……?」
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103: ◆GnIWQD74f.[saga]
2012/11/11(日) 20:26:45.47 ID:K4KVUEBGo
 そして私はつい嘘をついてしまった。詢子さんは笑いながらも、少し悔しそうな表情で話の続きを始めた。

「あはは。確かに人は多かったねえ。まあそれはイイとしてさ。
まどかのやつトイレに行くって言っておきながら一人で外に出ようとしたんだ。外はすごい大嵐だってのにね」

「そうなんですか……」

(やっぱり、まどかさんは私達の事が気掛かりだったのね……。)

「まあ面白半分で行こうとしたって訳じゃ無いのは分かるんだ。あいつの覚悟の様なものを垣間見たわけだし」

「まどかさんの覚悟……。一体どういうものかしら……」

 私がそう聞いた時の詢子さんの表情はとても辛そうで、今にも絶望に呑まれそうになっていた。

「……わたしじゃないと出来ない事があるって言ってた。……それがどういう事かあたしには全く理解出来なかったけど、
その時はまどかがどこか遠くに行っちゃうんじゃないかって思って私は気が気じゃなかったさ……」

「そう……ですか……」

 詢子さんの辛そうな声を聞く度に、私の胸の辺りにチクチクと棘が刺さってしまう。

「だからあたしは、その時初めてあの子に本気で手を出してまで必死に止めたね。……結局あいつの覚悟に負けて行かせてしまったけど」

「まどかさんの……覚悟……ですね」

「まあ、こうしてまどかが無事に戻って来てくれたから、あたしもこうして正気でいられるんだろうけど、もしもそうじゃなかったらって考えたら……ね」

「その気持ち……。痛いほどわかります」

 両親を亡くした私には特に。それでも詢子さんは、この場を明るくしようと笑顔で笑っていた。
 そんな時、詢子さんが別の話を私に持ちかけてきた。

「あはははっ。そういえば話は変わるけど、まどかにはもう一人マミちゃんと似た境遇の子がいるんだよね」

 私には、その子の事がすぐに分かった。

「佐倉さん……ですね」

「おや、マミちゃんとも友達なのかな?」

「そうだといいんですけど……」

 そう私がうやむやに言ったものだから、詢子さんは少し申し訳なさそうな顔をした。

「……杏子ちゃんとケンカでもしちゃったのかい?」

「はい……。ちょっと昔に行き違いがありまして……。今ではもう、私もあの子もそんな事は気にしていないと思うのですが……」

「……自信がないんだね。まあ、この世の中みんながみんな、仲良しこよしでいられる程に上手くできた世界じゃあないからねえ」

 詢子さんの言う通り、非情にもこの世界には様々な意見があり、ぶつかり合う事があると、こんなわたしでも理解はしている。
でもそれは寂しくて悲しい事に変わりなかった。

「そう……ですよね……」

「……でもさ。今は杏子ちゃんとは仲良くできてるんだろう?」

「はい……」

「だったらさ。二人とも昔の事なんか気にせずに楽しくやればいいんじゃないかな? って、答えになってないか〜」

 詢子さんはそう言いながら申し訳なさそうな顔をしながらも、楽しそうに笑ってウィスキーを口に含んでいた。

「いいえ。詢子さんの言う通りです。こうしていくら悩んでいたって答えが出ないのなら、自分から進んで行動すればいい。そうですよね詢子さん?」

「おう。まあ、まだマミちゃん達は若さに満ち溢れているんだからさ。そうやって間違いを訂正していく生き方をした方がいいよ。
まあ、オバさんの僻みなんだけどねえ〜」

「そんな事ありません。詢子さんだって、まだまだ若さに満ち溢れていますよ。お肌だって綺麗ですし、見た感じも二十代前半ですって」

 私がそう言うと、詢子さんは本当に嬉しそうに笑っていた。

「あははは! もう、マミちゃんったらホンっトいい子なんだから。」


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