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113: ◆EEWQeQ.ZIg[saga]
2012/10/20(土) 22:24:33.63 ID:1MBoVCVh0
2、もう少し待ってみる

貴方は、もう少しだけ待ってみる事にした。

もしかしたら、開けてくれるかもしれない。貴方がまだここにいると思った眼鏡が、開けてくれるかもしれない。
彼女の心根は優しいから、貴方を無視した事を後悔して、怒りながらも、開けてくれるかもしれない。

……希望的観測も良いところ。だけど、貴方に何をしろと言うのだ。
この扉を蹴破って闖入するか？　そんな事をしたら、ますます嫌われる。
悲しいかな、その上貴方には、鍵のかかった扉を破壊するだけの能力を持たない。

祈りながら、待つしかできない。

少しだけ待って、反応は無くて、それでも、もしかしたら、もしかしたらと思い続け、待ち続ける。
「もう少し」は継ぎ接ぎのように繋がれ、長い時間となる。貴方は、どれだけ眼鏡の部屋の前で待っていたのだろう。

だけど、その扉は、閉ざされたままだった。

貴方は溜め息を吐く。今日はもう、駄目なのだろう。今日はもう、眼鏡は貴方を許さないのだろう。
仕方が無い、約束を破ったのは貴方。頼りたい人間に裏切られたら怒るのは、人の常。
また明日、明日の朝こそ、眼鏡を迎えに行こう。そして、その時に、謝ろう。

そうして、立ち去ろうとしたその時。

眼鏡「…………なにやってんの？」

貴方が向かおうとした階段の方から、眼鏡の声がした。

貴方は思わず顔を上げる。そこにいたのは、正しく、顔色の悪い眼鏡。

貴方「え……あ……えー……？」

貴方は一瞬で、状況を飲み込んだ。
最初から。貴方がこの場所を訪れた最初から、眼鏡は部屋にいなかったのだ。
今はなんの時間だ？　夕食の時間だ。夕食の時間に夕食を食べるのは当然だ。
夕食を食べに食堂にいるのなら、部屋にはいないのは当然だ。

反応が無いのは当然だ。部屋にいなんだから反応するわけが無い。

あまりの馬鹿らしさに、貴方の体は力が抜けそうになる。
そこを堪え、貴方は頭を振って、眼鏡と見合う。

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