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738: ◆EEWQeQ.ZIg[saga]
2012/11/06(火) 22:08:56.79 ID:cI4x59gN0
3、庭に出る

貴方は庭に出る事にした。

外は雨が降っているが、別に敷地内から出るわけでもないし、取り分け激しい雨でも無い。
傘を差せば、問題無いだろう。

□――――――□
｜貴方の家・庭｜
□――――――□

貴方が庭に出た時、雨に紛れて、ビニール製の何かが動いた。

何事かと思う前に、貴方はその正体をよーく見る。
なんて事は無い、ビニール製の何かは単なるレインコート。
それを着ていたのは、使用人男だった。

こんな日ではあるが、庭の手入れをしていたのだろうか。
こう言った事に関して、彼は手慣れているので、風の日は無理でも雨の日程度なら、通常と同じ作業効率を見せてくれる。
とは言え、無視してどこかに行くのも不安の種になりかねないので、貴方は話しかける事にした。

貴方「何をしているの？」

使用人男「む……――様。いえ、少し庭が気になりまして、チェックをしていたのでございます」

貴方「ふうん。何か、あったかい？」

使用人男「いいえ。歳を取ると、心配性になっていけません」

貴方「そんな事は無いよ……風が強くなってきたら、屋敷に戻るんだよ」

使用人男「かしこまりました……――様」

散歩代わりに、庭を一周でもしようかと離れようとした時、使用人男に呼び止められ、貴方は止まる。
使用人男が貴方を呼び止める事なんて、滅多に無い。その所為か、つい足を止めてしまった。

使用人男「……差し出がましい事と存じますが、眼鏡様の事です」

使用人男「……大切になさってください」

貴方「急に、どうしたの」

使用人男「この身はもう長くないでしょう。その前に、伝えておこうと思いまして」

貴方「そんな事を、言わないでよ」

使用人男「――様が当主となられるまでは、意地でも生きてみせましょう。念の為でございます」

貴方「……分かっているよ。決まっているじゃないか、そんな事」

貴方「僕があの人を大切にしなかったら、誰が僕を支えてくれる……？」

ある種の、依存なのかもしれない。だけど、眼鏡以外に支えられるその光景が、まるで見えない。
まあ、見えちゃったりしたら、たぶん、眼鏡は怒るのだろうが……。

貴方「心配無用。だから、あなたも長生きしてよ」

使用人男「かしこまりました」

そんな話をして、貴方は使用人男と別れ、庭を歩き回った。

……この屋敷のみんなは、意外と眼鏡の事を気に入ってくれているらしい。
眼鏡が肩身の狭い思いをする、と言う事はなさそうだ。

□――――――――――□
｜貴方の家・貴方の部屋｜
□――――――――――□

部屋に戻った貴方は、ベッドに向かい、倒れる。

そのまま目を閉じ、今日一日を振り返った。

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