過去ログ - 【咲安価】久「麻雀を?」京太郎「ええ、教えてください」 三局目
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127: ◆B6xkwd67zxGJ[saga]
2012/10/22(月) 18:59:55.06 ID:rn40zkgVo

「さて、それじゃあ椅子になってください」

「……ちょっと待て。色々ちょっと待て」


 目の前の少年から飛び出した発言に、弘世菫は頭痛を覚えた。

 ちょっと理解できない。何言ってるんだこいつは、という奴である。

 聞き間違いかと思ってみるが、須賀京太郎の表情は変わっていない。

 というかそもそも、どんな言い間違いをしたらこうなるのか。言い間違う前の言葉が想像できない。

 頭を抱えたかった。何が理由で、こんな流れになったのか。

 ここは個室である。弘世菫の部屋だ。周りには誰もいない。いわゆる二人っきりという奴であった。

 それならばこう、もっとあるだろう。何かストロベリーっぽいのが。

 それらすべてを一足飛びにしたというか、三段跳びというかもはや屋上まで直通のパルクールである。

 弘世菫の乙女心は砕け散った。そのまま屋上から投げ捨てられたのだ。


 外見に似合わずと言おうか。弘世菫は、少女らしい恋に憧れていた。

 ドラマのように波乱万丈とまではいかずとも、少女漫画のように、甘くて切ない恋愛を望んでいるのだ。いや、切なさは不要だ。

 年頃に甘い、そういう恋愛を心のどこかで願ってやまなかった。

 叶わないだろう、とそう思う程度の常識はある。それでも心の片隅では憧れがあるのだ。そんな恋愛に。

 そして、敵対校と呼ぶべきか、とにかく同じ高校生の麻雀最高峰という頂を目指しているライバルである清澄高校の、

 その麻雀部員である須賀京太郎と出会い親密になる時、そんな秘めていた憧憬を思い出さずにはいられなかった。

 ロミオとジュリエットっぽい。王道だ。いや、死にたくはないが。

 そして段々と関係が進むにつれて、そんな思いが強くなり、また、非常に充実した幸福を感じていた。

 麻雀づくしで灰色の青春。アラフォーになっても男の影はない……という暗黒ルートを逃れられたことに対する安心もあったのだ。

 そして今日、彼を家に呼ぶときなど、心臓の鼓動があまりにも煩かった。

 そのまま破裂して死ぬかもしれない。

 朝起きて何度も念入りに歯を磨き、落ち着きなく部屋の片づけを行い、ふと気づけば鏡で自分の姿を確認している。

 そんな少女の淡い期待は、浴槽に浮いた泡のように破壊された。

 冷や水をぶっかけられたのだ。シャワーどころか消防車からの放水レベルの。


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