過去ログ - 【咲：安価】京太郎「……家が無い」睦月「その12」【鶴賀】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲：安価】京太郎「……家が無い」睦月「その12」【鶴賀】

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301: ◆tXdh2WZ0lM[sage]
2012/10/23(火) 20:47:32.92 ID:Vp0uc8Hy0
～実はビデオレタールートの記憶がよみがえっているため、今度は巻き込まないように龍門淵に関わろうとしない京太郎(notころたん続編)～

……彼女をはじめてみたのは、県大会だった。

彼女を始めて知ったのは夢の中だった。

夢というよりかは陽炎かもしれない。

手の届かないものじゃなくて、ありえたかもしれない事実。

「――」

少女は画面の向こうで麻雀を打っていた。

それは決して楽しそうなものではなかったが。

絶望に満ち溢れたものでもなかった。

ただ彼女は前を見据えて麻雀を打っている。

――例えば、顔が崩れるほどに蕩けた表情ではなく。

――例えば狂ったように歪んだ笑みを浮かべるわけでもなく。

ただ前を見据えて、麻雀を打ち、そして負けた。

けれど、その顔はどこか喜びに満ちていた。

きっと彼女はいま幸せでいっぱいなのだろう。

「……うぅ、届かないぞ……！」

そして、その彼女が今目の前にいる。

自動販売機の高いボタンを押そうとして、背伸びしていた。

「……」

本当は手伝ってやりたかった。

本当は抱きしめたかった。

だって俺は彼女をあれほどまでに愛していたから。

忘れようとしたって、忘れられるはずなんてなかったんだ。

「うぅ……」

ぐす、と泣きそうな表情を見せる。

泣かないで、貴方に涙は似合わない。

ああ、慰めてやりたい。

この手で、頭を撫でてやって、その幸せな笑顔を俺に向けて欲しい。

けれど。

けれど俺が彼女に触れたら――。

「衣」

「京ちゃん」

二つの声が聞こえたのはほとんど同時だった。

彼女に助けが来て、俺の出番は完全に消えた――今出て行ったところで完全に不審者だ。

……それでいい、それでいいんだ。

どうしたの、と傍による彼女になんでもない、と返し、俺は愛しきあの人に背を向けた。

……もう二度と俺は彼女にかかわらない。

それが、一つの貴方の人生を台無しにした俺の、精一杯の償いです。

終わり。

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