199:来年になったら本気出します。……多分[saga sage]
2013/10/02(水) 00:10:48.12 ID:rTkh301v0
私は既に夥しい血で汚れている。
この汚れた身に子どもの鮮血をいくら上塗りしても今更大して変わりはない。
掌に紅い、泡のような球体を創り出す。
見た目こそ儚げに見ることもできるが、内実は無慈悲な破壊の顕現だ。
この球を破裂させればこの哀れな救われない子どもたちの存在は父の元に帰す。
せめて一瞬で終わらせるのが、優しさだろう。
実際は罪悪感を薄めるための利己的な醜悪な欲望に過ぎないのだが。
「……神さま、たすけて……」
子どもの一人が呟いだ。
その声音には一片たりとも希望は含まれていないようであった。
目を瞑る。弱い私は己が犯そうとしている罪を直視するに耐えなかった。
偉大なる父は子どもたちと私を見放したのだろう、私の心に変化を与えることはない。
私に良心を取り戻させることはなかった。
「……紅鬼様、お止めください」
――しかし、彼女の言葉は私の心を容易く揺さぶってしまった。
驚いて目を見開き、声の主へと目を向けた。
フィリアはいつもの微笑みの中に愁いを含めた表情で私を見ていた。
突如として私は己が為さんとした所業の惨さを痛感し、体が震え、羞恥で全身の血が沸き立ちそうになる。
涙さえ流しそうになる。
そして見当違いにも、彼女を呼んだのであろう単眼の黒猫を腹立たしく思った。
違うのだ、と私は掠れ声で言った。
喉がからからに渇いて、動転のあまり呼吸の仕方すら忘れかけていた。
「貴方様は優しいお方です。そのような行為は相応しく有りません」
何かを言い返そうとするが、口からはおおよそ意味をもつ音は出てこなかった。
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