2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/11/06(火) 23:44:21.07 ID:7OKftRVp0
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私は闇を裂くように走っていた。
より正確な言葉で表現するならば、逃げていた。
羽虫や小枝が顔や胴に当たるが構わずに駆け続ける。
前方に鎮座している大木を迂回して、更に森の深奥へと突き進む。
春が訪れたばかりで木々には柔らかい葉がついているのだろう。
やがて更に成長し、青々とした広い葉になるはずだ。
しかし、この暗闇の中では若葉を視認することはできない。
土地勘などは無く、夜陰の中の僅かな輪郭を辛うじて捉えて経路を選択する。
夜の森は一つの生物が蠢いてるようで、貪欲でおぞましい蟲の姿を連想させる。
濃厚な臭いを鼻腔へと送りつけ、異物である私までをも取り込んで膨張するかのような錯覚を与える。
そう考えると息苦しさを覚えたが、すぐに気を確かにして駆けていく。
着用していた粗末な履物はだいぶ前に脱ぎ落としてしまい、現在は裸足だ。
全力で駆けているため、闇の絨毯が敷かれた地面に偏在している仰向いた枝や尖った小石に意識を向けることもできない。
それらは分厚く変容した足裏の皮膚さえも突き破って私に傷を負わせる。
由々しき事だが、追われているため気を割くことはできなかった。
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