225:ありがとうございます[saga sage]
2014/03/14(金) 21:34:30.93 ID:Cdv9jBzv0
しかし、彼は本当に自ら生命を絶ったと言えるのだろうか。
意思、というものは、どれだけ私たちの在り方を規定できるのだろう。
誰が好んで死を望むのか。
生命は生命で有り続けるために活動を続ける。
続けずにはいられない故に生命なのだ。
その連続性を自らの意思を以って断絶するという行為は、健全な精神を喪失した時に発現するもののはずだ。
彼が唯一取れる自身の救済方法が、完全な“不感”になることだけだったとしたら、寧ろそれは適切な行為ではなかったのか。
そこまで考えて、その思考が何の意味も持たないことを悟る。
彼の死の意味を判断するのは私ではない。
父の裁量にどうして私が口を挟めるだろうか。
私にできることは、完全に黙してしまった彼が少しでも救われるように、静かな処に埋めてやることぐらいだ。
私は彼の頭(こうべ)を出来るだけ丁重に持ち上げる。
死の臭いが、私の鼻を突く。
まだ成熟しきっていない少年の頭部は瑞々しくて、私は何となく、果実を連想した。
まるで、原初の人が食べた、禁断の果実。
それは我々の原罪。
そして、彼は、私の――人間の罪の体現だ。
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