過去ログ - エルフ「素敵な顔ですね」
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26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/11/11(日) 01:19:47.25 ID:6/MOeH3h0



湯桶は、殺風景で小さな部屋にぽつねんと置かれていた。
なみなみと水が張られている。
火を使った痕跡は無いが、白い湯気が次から次へとわき出ている。

私は驚きの声を漏らした。
エルフは些細な活動にも魔術を使うらしい。
あの少女はおそらく黒エルフではないから『清術』の一種だろう。

呪術や清術――魔術への造詣は他の人間よりも有るが、エルフたちがここまで日常的に魔術を使うことは知らなかった。

粗末な服を脱ぎ、入湯する。
肌をさす熱に慣れるまで時間がかかったが、数分の後には身体の芯から溶けていくような快感に浸っていた。

十年近くも多くの異国を流れた。
東隣の神聖アルマーニ帝国から、更に東の異教国エルトゥールル帝国、果ては極東の大国にまで足を運んだ。

しかし、あまり風呂に入る機会は無かった。

アルマーニは、グランと同様に正神教を信仰する国であるため、公然と風呂に入ることは難しい。

異教徒の帝国であるエルトゥールルでは蒸し風呂の公衆浴場が公共事業として建設されるなど風呂に寛容だった。
しかし、私の身体に巻き付いた紅い痣は余りに目立つため、稀にしか入浴しなかった。
それでも西の商人に見つかって狙われた事も有るぐらいだ。

「あの……着替え。小っちゃいけど……」

少女が着物を持って浴室に入って来た。
私のために着替えを用意したらしい。

「……この汚いのは洗っておくから。ホントは触りたくもないけど」

少女は顔をしかめながら私の脱いだ服を指の先で摘まむ。

私は謝罪と感謝の言葉を続けて言ったが、彼女は特に反応しなかった。



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