37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/11/15(木) 01:09:10.76 ID:7Yq0nTdU0
「……お二人が人間を嫌うのは尤もですが、だからといって紅鬼様に罪が有るわけでは無いでしょう」
それは分からない、と私は思った。
「……『それ』は私たちが忌避する獰悪な呪術を身体に宿してるんだぞ。私たちに無関係な人間であるわけがない」
「紅鬼様のご事情を知らないのに決め付けるのは早計です。だいたい『それ』とは何なのです。倨傲な態度を取るのもいい加減にしなさい」
フィリアにきつく諌められ、黒エルフの女は歯がみした。
その仕草は、やはり幼子がするそれに似ていた。
「……人間は悉く悪だ」
自分に言い聞かせるように彼女は言った。
彼女の声を耳にしている内に、私は頭痛がしてきた。
依然として身体は震え、吐き気すら催している。
まるで感冒にでも罹ったようだ。
「……ご気分が優れないようですね」
私は言葉に詰まり、くぐもった声を出す事しかできなかった。
「……彼女が関係しているのですか?」
盲目のエルフは黒エルフの女に顔を向ける。
「……私は心当たりないな。有りたくもない」
心から忌々しげに黒エルフは言った。
私は再び目頭が熱くなるのを必死に食い止めていた。
片手で両の眼を覆い、歯を食いしばる。
これ以上無様な姿を晒したく無かった。
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