過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その１１ -SS速報VIP

過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その１１

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52:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga]
2012/11/19(月) 22:55:14.59 ID:g0SjZ+Ico
「なあ、――」

「できればこのまま君の口を塞いでしまいたいな。いや、割と本気で。
　いい、いや、いいんだ。これは私の我儘だろうさ」

赤楽は、苦笑する。
それを張紘は窘める。

「そう言う風に言ったものじゃあない。だって、身元が分かったじゃあないか。
　あんなにもお前は根無し草だったじゃあないか」

その言葉に赤楽――徐庶――は苦笑する。

「分かったところで。ああ、私は結局のところ、人殺しさ。思った通りで意外性の欠片もないのが申し訳ないがね。
　更には天涯孤独だ。ああ、今までと変わりなく、今までではいられない。苛立ちしかないね。厄介極まりない。
　それが自分の足跡と思えばこそ、さ！」

吐き捨てる赤楽――徐庶――に張紘は笑う。

「そうかい？おいらは嬉しいけどね。あんなにも自分を、自分の足跡に悩んでたじゃあないか。
　だから、おいらはお前の旅路が終わって、嬉しいよ」

ぐしゃ、とそれまでの取り繕っていた表情を崩して嘆く、泣く。

「何がだ。何がだ！人を殺し、狂人を演じる。恩を返す父母は無く、だからこそ因果に囚われる！
　一体私は！あそこで死ぬべきじゃあなかったのか！救われて！君に救われて！どうしろっていうんだ！
　人の死と絶望しか前世で見てない私をどうするんだ！お前の義兄弟はあんなにも光に包まれているじゃないか！
　お前ももっと光に！輝けよ！私なんてほっといてさあ！」

いやだ、足掻く身体を張紘は意外に力強い力で抱きしめる。

「おいらは、そんなにたいしたもんじゃない。
　あの時、行き倒れてたお前を拾ったのはきっと運命さ。いちいちそんなのに深く考えてられるもんか。
　何より、おいらは！」

渾身の力で消えそうなその魂魄を抱きしめ、口づける。

「過去も未来も知ったことじゃない！おいらは！」

静かで、自らの思いなんて発さなかった張紘は叩きつける。思いを。
だから、赤楽は、徐庶は染まる。
自分が、赤楽なのか、徐庶なのか。

「ああ、張紘。いつも、いつでも傍にいる。だから、もっと抱きしめてくれ――」

精一杯の願いに張紘は全力で応える。

――そして徐庶がこれ以降献策することはなかったのだ。
彼女はあくまで赤楽、張紘の愛人として人生を歩むことを選んだのである。

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