過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その１１ -SS速報VIP

過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その１１

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913:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga]
2013/01/06(日) 23:11:08.32 ID:Qo+FGqmAo
「見せてもらおうか、飛将軍の武威とやらを！」

ようやっとの出番である。趙雲は軽やかに舞台に躍り出る。
不敵で無敵。そう嘯く常と変らずに笑みを浮かべ愛槍龍牙をしごきあげる。
だが内心穏やかではいられない。何となれば主と定める青年、そしてその傍らにある二人は袁家の宿将たる人物。なぜ自分がその場にいないかと内心臍を噛む思いだ。
いや、理解はしているのだ。してしまっている。過日見た飛将軍の武威。それは趙雲をして手の届かない所に感じられるほどに遠いモノ。最強を見せたかったという主の言を受けて尚、その隔絶した差に打ち震えることしかできなかった。
お前ならば至ることが出来ると、閨でさえ囁かれた時に趙雲は決意した。そして理解した。自分の主は本気であの飛将軍、人中の呂布に克つことを求めているのだと。お前ならばできると本気で思っているのだと。
それを理解して後、趙雲は愛してやまなかった酒すら断ち、鍛錬に身を投じる。多忙な紀霊や顔良、文醜とは中々手合せできなかったが、典韋や楽進、陳蘭と暇さえあれば武を競う。
仮想敵はあくまで呂布。
ついには眠っているときにさえ呂布と打ち合うほどに武を追求する。
だが、それでも。それでも呂布には及ばない。あの日あの時あの場所で見た呂布に及ばない。
だから、だから主はこのように策を重ねたのだと趙雲は理解している。無論、不本意ではある。このように策を重ね、消耗を強いて得た勝利に意味はあるのか、と。

「勝てない戦はしない。だから袁家は最強なのです。
　星、いいですか。そもそも貴方の武人としての誇りというものに私は何の価値も認めていません。尊重くらいはしますがね。勝てないまでも負けないための策すら忌避しようというそれは百害あって一利なし。傍迷惑この上ないですね」

郭嘉は忌憚なく語る。趙雲にならば伝わると信じて。そして自分がどのような思考回路で策を積み重ねるかを示して。
だが、と言葉を重ねる。そのような武人の誇りと言う奴すら自分は考慮して策を重ねていると。

「まあ、正々堂々と遣りあって袁家の武家三将と星、貴女が討死しても構いません。それでも袁家は勝ちます。そのように策を重ねています。風と私がそうしているのです。ですから、貴女はお好きにしなさい。ええ、ご随意に」

甘えるな。親友からのその言外の叱咤を趙雲は正しく受け止める。そして思い知るのだ。寄せられる期待の重さを。紀霊自ら、他の二将まで動員して呂布の消耗を図るなぞ。いや、紀霊は笑っていたが。

「なに、恋の消耗を図るのはいい。だが、俺と斗詩と猪々子でかかるんだ。倒してしまっても構わんのだろう？」

冗談めかして笑ったあの声。
だから、あの、希代の演出家が拵えてくれた舞台なのだ。なにせ、黄巾の乱を率いたという三姉妹の舞台だって紀霊が助言を与えてからその飛躍が始まったと程立は漏らしていた。
だったら。
だったら、期待に応えねばならない。そして今の自分は程立、郭嘉の策を重ね、紀霊ほか二人の献身あって尚呂布に及ぶかどうか。
趙雲の目から見ても紀霊たち三人の連携は完璧であった。なのに呂布を討ち取るに至らない。だからこそ無様は晒せない。
最高の舞台をあつらえてくれたのだ。ならばそこにおいて蝶のように舞おう。そして蜂のように刺そう。

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