4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/11/18(日) 22:47:01.79 ID:FygFt39p0
「みんなボクが女の子だってこと忘れてないかな……」
「だ、大丈夫ですよー。落ち込まないでくださいー」
ボクだって女の子らしくヒロインになって恋に落ちてみたいよ……
慰めようとするやよいを尻目に、細くも凛々しい眉を下げながら真は窓ガラスに頭を預けた。
生い立ちと外面、そして『男の子のような女の子』という触れ込みにより真は世に売り出すことができたのだが、それは真が望む“アイドル”としての自分の姿とは大きく違っていた。
周りのアイドルが可愛く、または美しく振る舞う中で活動することに対するジレンマも少なからずある。
しかしそのギャップを本当は受け入れたくないのだが、嘘でも受け入れなければ芸能界では生きていけない。
いつものことだ。
分かりつつも、真はどうにもできないモヤモヤを胸の内に感じ、それを吐き出すかのように大きな溜め息をついた。
そうして、しばらく窓に映り込んだ自分の顔を見ていた真の横で、やよいがふと車窓から外を見た。
「……事務所に着くのは夜遅くになりそうですねー」
話題転換を計ったのか、やよいはおもむろにそんな事を言い出した。
だろうなぁ。
やよいと同じく、車窓から夕日に赤く染まった空を眺めながら真はそう思った。
まぁ、よくあることだからしょうがないか、と開き直り携帯を開く。
「えぇと、今日もまた遅くなりそうです。と……」
「真さん、誰にメールしたんですかぁ?」
「お世話になってるプロデューサーさんに。
やよいは家の方、時間は大丈夫なの?」
「あ、はい。ちょっと心配ですけど、弟が上手くやってくれてると思います」
そう言ったやよいは家族に思いを馳せている様子で、その表情はいつもの幼い雰囲気から打って変わって、しっかりした姉としての表情をしていた。
真はその表情を見せられるたびに感心させられた。自分ではこんな表情はできない、と。
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