38: ◆1XmsYbpRzk[saga]
2012/12/16(日) 22:28:46.84 ID:ugYQlzwp0
しかし、駆けつけたところで既に事は起きてしまっていた。
制服を着た青年が、その心臓を抉られていたのだ。もう助かりようはない。なんてことはない、よくあることだ。五体満足で死ねただけ幸運ではないか。
新城は率直にそう思った。
しかし、その主人である少女にはそう思えなかった。
凛「なんでコイツが……!!」
新城「恋仲か?」
凛「違うわよ!! ――――ああ、知ってる。これが最悪ってヤツね」
随分可愛い「最悪」じゃないか、とは言わなかった。新城は、そういう男だ。自らの価値観を他人に押し付けない。しかし、何者にも強制されない。ひとつの例外を除いて。
新城「それで、どうする?」
凛「どうも何も、助けるわよ」
凛は赤いペンダントを取り出す。魔の眷属となった新城には、それがどれほどの魔力を湛えているのかはすぐに分かった。
なにやら魔術が発動したのは理解できる。何が起きるのかも想像できる。しかしその理屈を新城は予想できない。しかし、魔術とは決して理不尽なものではないと直感した。
あのペンダントの魔力を引き換えに、彼は助かるのだ。凛が何年間もかけて魔力を貯めたその時間ごと、引換にして。
儀式自体は短時間で終わった。
さきほどまで虫の息だった青年は、いまだ脆弱であるが確かな息をしている。
凛「終わったわ。帰るわよ」
新城「了解」
魔獣が、清廉とした少女と卑小な男を乗せて烈風のごとくその場を去った。
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