過去ログ - エルフ「……そ〜っ」 男「こらっ!」
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832:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/15(土) 01:51:48.85 ID:hPuuzhub0
 次第に合い始める二人の呼吸。己の背中を友に託し、自身は目の前の敵へと意識を向ける。
 そうして、彼らにとって軍に所属してからの初陣はしばらく時間が経ってエルフ側が発した撤退の合図と共に終わりを告げるのだった。

……



男「……」

女騎士「……」

 二人は無言のまま基地へと戻る。既に身体は満身創痍。気を抜けば意識を持って行かれそうな身体に喝を入れてどうにか歩いていく。
 彼らの全身はエルフたちの返り血に染まり、巻き上がった泥や土で服はベタベタだった。
 そんな中、それまで足元を見て前へと進んでいた男が不意に視線を上げた。そして、彼の視界に映ったのは同じようにボロボロな姿になった男騎士の姿だった。

男騎士「……」

 男騎士は心ここにあらずといった様子で先を歩いていた。彼の無事を確認し、ホッとすると同時に男は愕然とした。
 視線を周りへと散らした彼の瞳に映ったのは、数時間前までは全員いたはずの新兵の数が半数以下にまで減っているという現実だった。
 あまりの出来事に彼は思わず言葉を失った。こんなにも、あっけなく人は死んでしまうのか……。そう思う彼にかつて失った人々の姿が重なる。

妹『お兄ちゃん! 今日は何して遊ぶの〜』

女隊長『男はこれからどんな成長をするんだろうね〜。あ、別に深い意味はないよッ! ただ、男の成長した姿が楽しみだな〜って』

 もう二度と触れ合うことのできない温もりや笑顔。そんな彼らとの思い出を命とともに奪った敵。
 固く握り締めた手に爪が食い込む。奥歯を強く噛み締め、怒りを必死に抑え込む。胸の内はドロドロとした暗い感情だけが湧き上がった。

男(絶対に、絶対に滅ぼしてやる……)

 決意、というよりはもはや執念に近い何かを心に深く刻み男はその場を後にした。
 だが、彼は気がつかない。己が既に戦争という人を狂わせる装置を動かすための歯車の一部へとなりつつあることを……。


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