過去ログ - エルフ「……そ〜っ」 男「こらっ!」
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[saga]
2012/12/16(日) 01:00:58.14 ID:b22kecLo0
男「あ、えと。これは……」
しどろもどろし、己の行動の理由を探す男。慌てふためく彼の様子を見てそれまで呆然としていた女騎士は思わず苦笑した。
女騎士「何をそんなに慌てているんだ。全く、男は可笑しいな」
いつぶりかもわからない微笑み浮かべ、女騎士は笑い声を上げた。
男「う、うるさいな……」
そして、当の男も絶対に見まいと決めていた女騎士の顔を見てしまい反応に困っていた。戦場に入り浸り、肌は荒れ、瞳に浮かぶ光は濁り始めてしまっていたが、それでも彼女は相変わらず魅力的な女性だった。ここ数ヶ月で伸びた髪の毛が吹き抜ける風で揺れ、艶かしいうなじをより強調する。
女騎士「なあ、男。私じゃ、ダメかな? 私に魅力がないのはよくわかっている。剣にばかりかまけて町娘に比べて筋肉もついているし、その……色気だってない。男性とまともに付き合ったことだってないから、知識はあるものの実際にこうした時どうしたらいいかわからなくて……。
かといって、誰でもいいわけじゃないんだ。だって、いくらこんな状況だからって私は自分が心を許せる相手以外にこの身体を、心を預けたくないんだ。
でも、男。お前だったら、お前にだったら託せるんだ。私の身体も、心も。だから……」
女騎士の顔が徐々に男の元へと近づいてくる。まるで時の流れが遅くなったと感じるほどゆっくりと近づく彼女の唇に男は金縛りにでもあったかのようにその場で硬直していた。
そして、ついに女騎士と男の唇は触れ合い、女騎士は男の体をギュッと抱きしめた。
女騎士「……ンッ……ハムッ……チュッ……」
男「……チュッ……フムッ……」
タガが外れたようにお互いの唇を貪り合う二人。そのまましばらくキスを交わし、互いの瞳を見つめ合う。
男が危惧していた不快感は不思議とわかなかった。それは女騎士だからなのかわからないが、少なくとも彼女ならば自分は受け入れることができるということを彼は感じていた。
そして、男に拒絶されず受け入れてもらえたという事実は女騎士にとっては喜ぶべき出来事であった。
女騎士「ねえ、男。この続きは……」
続きの言葉を口にしようとする女騎士の唇を再び男は塞いだ。
男「うん、もっとちゃんとしたところでしようか」
そうして二人は基地へと戻り、女騎士の部屋にて身体を重ね合わせる。周りで同じような行為に及んでいるものと似て非なるもの。
恋をしたわけではない。この胸に宿るものはおそらくこの状況だからこそ生まれているものだということを二人は理解している。だが、互いに相手のことを大切に思っているということだけは事実だ。
キスを交わし、身体をまぐわせ、互いに抱きしめ合うたびに胸に温かい何かが生まれるのを二人は感じた。
恋心とも愛情とも違う何か。言葉にできないそれを相手に与えながら、同時に自分も与えられる。そうしているうちに時間は流れ夜が訪れた。
部屋の窓からたくさんの星がキラキラと輝いていた。昨日まではそんなことにすら気がつかなかったのに今だけは世界が煌めいて見える。
男「ねえ、女騎士。見なよ、星が綺麗だ」
服の代わりにシーツで身体を隠しながら女騎士は窓越しに星を見る男の傍に寄り添う。
女騎士「ああ、本当だな。本当に……綺麗だ」
そう言いながら女騎士は男の背中に抱きつく。そして、そんな彼女の頬を男はそっと触れ、彼女の身体を優しく撫でた。
女騎士「なあ、男。たまにでいいんだ。私が生きている間、いやここにいる間だけでもいい。こうして私を受け入れてくれないか?」
男「……うん。女騎士が僕を必要としてくれるのなら、僕はそれに……応えたい」
二人共頬を上気させ、見つめ合うこと数秒。先程までしていたようにキスを交わし、再びベッドへと倒れこむ。
壊れかけの人間二人。それぞれの胸にポッカリと空いた空虚な想いを埋めるために互いの心を補填し合う。
堕落し、壊れてゆく人々。そんな中、男と女騎士の二人は、そのような人々とは少し変わった関係を築いてゆくのだった。
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