過去ログ - エルフ「……そ〜っ」 男「こらっ!」
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938:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/12/29(土) 22:38:23.16 ID:1f/X2rNz0
 僅かな時間での人心地。四人だけの温かな空間が静かな森の中に生まれていた。
 だが、そんな空気を壊すように木々を踏みしめる足音が聞こえた。

男「!?」

 瞬間、女魔法使いを除いた全員が気配を極限まで薄めた。それができない女魔法使いはすぐに男に抱きかかえられてその身を隠された。
 息を潜め、周囲を見渡す。すると、百メートルほど先に周囲を探索している青年エルフの姿が見つかった。
 男たちは木々の間に姿を隠し、そのエルフの動向を探る。彼はキョロキョロと周りをいぶかしみながら見渡していたが、なんの気配もしなかったため、気のせいだと感じ、森の奥へと歩いて行った。

男「危なかった……」

騎士「だけど、あんだけ周囲を警戒してるってことはきっと何かあるな」

女騎士「もしかしたら、敵の本隊がいるのかもしれないな。どうする、男。このまま追う?」

 その言葉に男は逡巡する。罠かもしれない。相手はわざとこちらの様子に気がついていないふりをしてこちらが来るのを待ち構えているのかもしれないと男は考える。
 彼がそう考えてしまうのは慎重さもだが、西方司令官とのやり取りでヘマをし、こんな状況に仲間を導いてしまったことの責任もあった。
 だが、もしそうでなかったのなら自分たちはみすみす敵の有力な情報を見過ごしてしまうかもしれない。

男(……どうする)

 男たちの戦力は四人。だが、相手は未知数。そのようなあやふやな状況で動いていいものだろうか。
 考える時間はあまりない。早くしなければエルフの後を追うのが困難になってしまう。

女魔法使い「……行きましょう」

  だが、そんな彼の迷いを消すように女魔法使いが呟いた。

男「女魔法使い?」

女魔法使い「行きましょう、先生。ここで引いたら私たちは何のために戦っているんですか? このままエルフを見過ごせば、先生に会う前の私みたいな人がきっと増えます。あいつらは早く私たちの手で消さないといけません。
 じゃないと、いつまで経ってもみんな暗い顔のまま毎日を過ごさないといけません。笑顔を浮かべられないかもしれません。
 だから、行きましょう。エルフを倒すために、有力な情報を持っていって私たちをこんな目にあわせてる司令官にその結果を突きつけてやるんです!」

 男たちと行動を共にしてまだ一番時間の浅い女魔法使いの言葉を聞いて男は決断する。

男(そうだ、何を迷っているんだ。早く奴らを倒さないといつまで経ってもこの戦いは終わらない。
 誰かが動くのを待っているんじゃない。僕たちが動くんだ。もう僕や女魔法使いのような被害者を生み出さないためにも奴らを[ピーーー]必要があるんだ)

 そう思い、ついに男は決断する。

男「みんな、行こう。あのエルフの後を追って何か情報を掴むんだ」

 男のその言葉に三人は頷く。

騎士「ああ、その言葉を待ってたぜ」

女騎士「私と騎士で前衛を担当する。男と女魔法使いは後方の警戒を頼むわ」

女魔法使い「わかりました。行きましょう、先生!」

 そうして騎士、女騎士を前衛に配置し男と女魔法使いはその後に続く形でエルフの追跡を開始する。
 決断し、行動をする。仲間たちとの心も一つに纏まっており、不安など絆の前に霞んでいる。
 だが、男の中には何か言いようのない得体の知れぬ何かが付きまとう。だが、そのなにかがどうしてもわからない。
 理解できないそれ≠胸の奥に無理やり押し込み、男は騎士たちの背中を追った。だが、その正体はこの時よりしばらく後になって明かされることになるのだった。



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