16: ◆K7HPJB6g7s[sage]
2012/12/06(木) 22:54:43.50 ID:0bpAgyZro
優希に囃されてから僅か数時間後。
「つ、ツモっ!」
「じょ!?」
南3局、優希の親番で声を震わせながら和了宣言をしたのは、京太郎。
「え、えっと、リーヅモ断ヤオ一盃口――裏2! ハネマンっ。6000、3000!」
「は、跳満……。と、いうことは――」
京太郎が指を折りながら覚束ない点数申告をする中、麻雀部の面々は驚きに包まれる。
それもその筈、
「もしかして俺、トップ……?」
優希の親を流しオーラスを迎えた段階で、京太郎が咲を抜いて1位に躍り出たのである。悲しいことに、
いつも開始から数局で戦線離脱してしまう京太郎にとって、リードをしたままオーラスを迎えることは
初めての快挙であった。
自分の計算が信用できない様子で、京太郎は確認するように周りを見渡す。優希が親被りになったこ
とを小声で嘆いているのを尻目に、いち早く冷静さを取り戻した和が頷いてみせた。
「そう、ですね。このまま須賀君の最後の親で逆転が無ければ、ですが」
「ま、マジか……。うおぉ、緊張してきた!」
京太郎以外の三人が潰し合っている隙に上手く抜きん出ることが出来た、まさに千載一遇のチャンス。
優希の言う『ありえない1勝』がその日の内に現実となりそうになっていることに、京太郎は緊張と興
奮に震えた。
「ふふっ、頑張ってね京ちゃん。でも、そんな簡単に初勝利はあげられないかな?」
喜ぶ京太郎に笑顔で応援の言葉を贈る咲。しかしその含みを孕んだ言い回しに、京太郎は即座に冷静
さを取り戻した。
――そう、だよな。相手はあの咲や和なんだ。ここで気を抜いたらすぐにまた抜かれることは目に見
えてる。
でも、あとはこの1局だけなんだ! 食いタンでも特急券でも、なんでもいいから和了るだけ。それ
なら俺にだって勝機はあるはず!
希望を胸に覚悟を固め、京太郎は真剣な面持ちで自動卓のボタンに手を掛ける。
オーラスの開始を告げる2つのサイコロが、カラカラと乾いた音を立て始めた。
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