過去ログ - 京太郎「俺は、楽しくない」
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20: ◆K7HPJB6g7s[sage]
2012/12/06(木) 22:57:36.54 ID:0bpAgyZro


「――そんなことはないじょ!」


と突然優希が捲し立てた。

「京太郎は役と点数計算覚えただけで全然知識足りてないし、今回はたまたま高い手で和了れただけで、
麻雀の腕はシロート同然だじぇ!」

 むっと、京太郎も顔をしかめる。

「なんだよ優希。その言い方は酷いだろ?」
「いーや、酷くないじょ! オーラスの手だって、私から鳴こうとしてるのが丸分かりだったし、自分
の手作りに必死で全然のどちゃんと咲ちゃんのテンパイに気付けてなかったし」
「う……。っていうか、和も聴牌(テンパ)ってたのか」

 話を静観していた少女は、目を向けられてコクンと頷く。

「はい。平和ドラ2で、ツモか須賀君からのロンで逆転ですし、二人から出ても2位にはなれましたか
ら、黙聴(ダマ)っていました。須賀君は流す気が無さそうでしたし、出てくるならそっちかな、とは思
っていましたけど」
「あっ! そうか、ノーテンでも1位で終われたのかぁ……。それに点数状況によってはみんなが1位
を狙ってくる訳でもないんだよな。そこまで頭が回ってなかった……」

 自分が状況確認さえ出来ていなかったという事実に、情けないような、やるせないような気持ちを抱
き京太郎は肩を落とした。折角運が味方をしてくれたのに、自分で勝利を逃したようなものである。そ
れが、大負けした時よりも強く京太郎の心には堪えた。

 和はまだまだミスがあると示すように、麻雀卓に身を乗り出す。

「頭が、と言うより、気持ちだけが空回りしていたようですね……。ちょっと手牌を見せてもらっても
いいですか。――ほら、例えばここの牌を捨てずに持っていればここで両面になっていますし、ここで
優希から鳴いて聴牌出来ていましたし……」

 己の未熟さを実感させられたところに、和からのありがたくて的確で辛辣な講釈を頂戴し、京太郎の
背中はどんどん小さくなった。眼前で忙しなく動く和の細い指先を、京太郎はボンヤリとした目で眺め
ている。

 ――じゃあ今の勝負、和なら1位になれたってことか?
 そりゃあそうだよな、俺なんかとは違ってしっかり状況も見れてるし、切る牌も的確だし。あんなチ
ャンスを棒に振る俺が、てんで見てられない素人ってことなんだろうな。
 ……でも、なんでだろ? 放っておいてほしい、と思うのは……。

 徐々に京太郎の眉間に皺が寄ってくるが、顔を伏せている為周りの人間にそれを知る術はない。


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