105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/04(木) 11:10:02.97 ID:BCF7Q/9U0
風に煽られて草と草が擦れ合う。ザザッていう音がした。
ゆっくり流れる川の向こうには、こっちと同じ河川敷と土手。その向こうには高いビルがいくつも建っている。
特に目的もなく、ただそれを見つめる。
お昼を食べ終えた自分とプロデューサーは河川敷でウダウダしていた。
午後に行きたい場所はあるけれど、プロデューサーが食べてすぐ動くのは嫌だと言ったから、こうしている。
プロデューサーは穏やかな表情で、建ち並ぶビルを見ている。
ねえ……プロデューサー、何を考えているの?
誰のことを考えているの?
自分? それとも春香?
「こんなに落ち着いて過ごす休みの日は久しぶりだよ」
「そうなの?」
「ああ、昨日も言ったけど俺にとってオフの日なんていうのはいつも同じように仕事する日みたいなものだから。自然とそれが当たり前になってた」
「働きすぎだよ」
「響がそれを言うなよ」
「うぐっ……」
「まあ……とにかくさ」
プロデューサーは大きく伸びをして、ビニールシートの上で大の字になる。
「響が俺にわがまま言ってくれたおかげで、俺はいま仕事もせずにダラダラ出来ているわけだ」
「休みの日は休むべきだよ。アイドルもプロデューサーも」
「違いない」
プロデューサーのフッと笑う声がした。
自分は空を見上げる。
「空、青いね」
「ああ……大きくて綺麗で空の海だ」
気持ちのいいそよ風が頬を撫でる。
「風、気持ちいいね」
「ああ……」
それだけで会話は終わってしまう。
お互いに何も話さなくなる。それでも沈黙がどこか心地いい。
いま、プロデューサーと同じ空を見ている。
いま、プロデューサーと同じ風を浴びている。
いま、プロデューサーと同じ場所にいる。
いま、プロデューサーと同じ時間を過ごしている。
自分とプロデューサーで、なにもかもを分かち合っている、繋がっている。
空を見ながら、何かを探すように手を動かす。
プロデューサーの手が握りたかった。
もっと深く強く繋がれるような気がした。
手と手が重なる。暖かくて、大きい手だ。
ギュッと少し力を込めてプロデューサーの手を握る。
突然こんなことされたらプロデューサーはどんな顔をするんだろう?
出来たら握り返してほしいかな。
でも、自分の手が握り返されることはなかった。
だって、プロデューサーは
「……んぅ」
眠っていたから。
呆れたぞ。緊張して手を握った自分がなんだかバカみたいじゃないか。
プロデューサーは心地よさそうに寝息を立てている。
……手のかかるプロデューサーだ。
「まったく疲れがたまっているのはどっちだよ」
自分は静かにプロデューサーの近くまで動くと、プロデューサーの頭を自分の膝の上にそっと乗せた。
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