過去ログ - P「君と過ごす1週間」
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125:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/22(月) 00:38:30.94 ID:ZFvzYZSZ0
ついさっきまで、広いレッスン場には俺と春香がいた。
そこに響が、人ひとりが加わった。ただ、それだけだ。
それなのに、どうして空気がこんなに重たいのだろう。

「……っ!」

どこか思いつめた表場をする響はその場から逃げるように駆け出した。
俺と春香の横を走り去っていく。尋常じゃない雰囲気だ。
俺は一瞬、春香の方を見る。
春香は何も言わずに頷いた。行ってくれということなのだろう。
俺はすぐに響を追いかけた。



「待ってくれよ、響!」

長いポニーテールが目立つおかげで見失わずにすんだ。
前を走る響のペースが落ちてくる。
だが、響の背中は強ばっている。

「響……」
「嘘つき!」

声をかけようとした途端、響の怒鳴り声が遮った。
嘘つき……どういう意味だ?

「俺は春香のプロデューサーだよ……今までだって、これからだって」
「……聞いていたのか」

それは俺が春香に向けた言葉だ。響に向けたものじゃない。

「プロデューサー、自分のプロデューサーだって言ってくれたのに……酷いよ」
「聞いてくれ、響、俺は……」
「嫌だ! 聞きたくない!」

響は頑なに拒絶を続ける。

「プロデューサー、自分のことを笑っていたんだろ? 自分はプロデューサーの本当の担当アイドルじゃない。偽物なのに……あんな、楽しそうに笑って馬鹿な奴だって!」
「そんな訳あるか!」

叫ぶ響に俺も大きな声を上げてしまった。
大人が子供相手に怒鳴る。みっともない姿なのかもしれない。
それでも、俺は響の言葉を否定せずにはいられなかった。

「俺にとっては春香も響も、俺の担当アイドルだ!」
「でも、ずっとじゃないよね……春香と違って」
「それは……」

否定のできない事実が、鋭利なものとなって心に突き刺さる。

「自分、何を浮かれていたんだろうね。どうせ、この一週間の関係でしかないのに」

自嘲気味に笑う響の声が聞こえてくる。

「ねえ、プロデューサー……」

響は振り返って、俺と向き合う。響は虚ろな目で、涙を流していた。

「どうしてプロデューサーは765プロのプロデューサーなんだ? どうして961プロのプロデューサーじゃないの?」

光のない冷たい、死んだような目で見つめられる。
俺は顔を逸らした。何も答えられなかった。
響は踵を返し、歩いていく。

「響!」

俺は叫んだ。
俺の言葉が届くかは分からない。でも、今なにかを言わなければ響が永遠に俺の元から去ってしまうような気がした。
たとえ、どこかで顔をあわせても、響の心には出会えない。
俺はプロデューサーとしての想いを、担当アイドルの響にぶつける。

「俺、待ってるから! 明日のオーディション、響が会場に来るの……待ってるからな!」

響は立ち止まることも振り返ることもなく歩く。
6日目が終わる。
響から「また明日」とか何も言ってもらえないまま終わるのは、初めてだった。



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