17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/27(木) 11:04:21.14 ID:AiAaVwUK0
765プロに連れられてきたレッスン場、そこは広くてとても清潔感のあるところだった。
普段、自分が使っている961プロのレッスン場ほどじゃないにしろ、このレッスン場が質の高い所だってことは理解できたんだ。
「どうだ、響? 765プロが借りているレッスン場は?」
765プロが少し得意げな顔をする。
貧乏事務所の765プロが、こんないいレッスン場を借りられているなんて少し不思議だったぞ。
そのことを765プロに聞いてみると、
「765プロは女の子の夢を叶える事務所だからな。アイドルや候補生たちがいいレッスンを出来るように、質の高いレッスン場を提供しているわけだ」
「貧乏なのに?」
「削るところを削れば、意外にお金は集まるものさ。そう例えば……プロデューサーや事務員の給料とか」
おかげで昔は白飯に漬物が、と765プロは言葉を続けていたけど、どうでもよかったので聞き流した。
「それより765プロ、レッスンを始めようよ」
「それもそうだな。響、着替えてきてくれ」
「はーい、わかったぞ」
バッグを持って、更衣室に向かう。
あっ、そうだ……言い忘れていたことがあったぞ。
相手は変態事務所の変態プロデューサーだからな、ちゃんと言っておかないと。
「覗くなよ、765プロ」
「覗くか!」
トレーニングウェアに着替えて、765プロの前に立つ。
765プロは自分に、どんなレッスンをするのかな?
まっ、どんなレッスンでも完璧な自分にかかれば楽勝だけどな。
自分の実力を765プロに見せつけてやるぞ。
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我那覇響というアイドルのレッスンの指導をしてみて、わかったことがある。
彼女は間違いなくトップアイドルの座を掴めるだけの実力を備えている。
ボイスレッスンではピアノの音に合わせて高音、中音、低音それぞれを巧みに使い分け、
表現力レッスンでは歌詞の意味を正確に理解し、歌詞に出てくる登場人物の心情を見事に表現してみせた。
そして、ダンスレッスン。
俺の手拍子に合わせて、響がステップを踏む。
手拍子の間隔は短いはずなのに、響の顔には疲労の色は見えず涼しい顔をしている。
「765プロ、もっとペースを上げていいぞ!」
「えっ、今でも十分早いぞ?」
「いいから! 自分、まだまだ動き足りないぞ!」
「わかった、ならペースを上げるぞ!」
「ふふん、望むところだね!」
響の要望に合わせて、俺は手拍子を更に早める。
これについていくのは、春香でもかなり難しい。最初はついていけるのだが、途中で足がもつれてしまい、転んでしまうのだ。
正直、このハイペースに完璧についてこれるのは765プロの中でも体を動かすのが大好きなあの子くらいしかいないだろう。
しかし、響はそれに安々と食いついてくる。
響と目があう……響は俺に向かってニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「もっと凄いのをみせてやる」
そんな声が聞こえた気がした。
次の瞬間、それまで俺の手拍子に合わせてステップを踏んでいるだけの響に変化があった。
響のダンスがより大きく力強いものへとなる。
見るものを圧倒するようなダイナミックな動き、それでいて雑じゃない。
指先までに神経を通わせ、流れるように綺麗に踊る。
大胆さと繊細さ、真逆の二つが見事に混ざり合っている。
気がついたら俺は、ダンスレッスンを終わらせるのが惜しくて、響のダンスがもっと見たくて、
子供みたいに夢中になって手を叩いていた。
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