過去ログ - P「君と過ごす1週間」
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26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/01/25(金) 12:55:53.28 ID:FTmCATF80
収録も終わり、スタジオを出てからの帰り道。
俺の隣を歩く響は、大層ご満悦な顔だ。
収録が自分でも納得のいくものだった証拠だ。

「見たか、765プロ! 自分の完璧なパフォーマンス!」
「ああ、完璧だったよ」

確かに響の言うとおり、パフォーマンス自体は完璧だ。
だから、普通に考えて俺がプロデューサーとしてアドバイスすることなどない。

「……ただな」
「むっ……なんだよ、自分のパフォーマンスに何か問題があったのか?」

俺の言い回しに響は不満気に口を尖らせる。
それでも、俺は自分の中にある違和感を口に出さずにはいられなかった。

「なんて言うかさ、歌っている時の響が楽しそうに見えないんだよ」
「楽しそう? 765プロ、アイドルは遊びなんかじゃないぞ?」
「そういう意味で言ったわけじゃない。俺が思うに響はオーバーマスターという楽曲の枠に自分を組み込みすぎていると思うんだよ」
「……」

オーバーマスターという楽曲の持つ、挑発的でアダルティーなイメージ。
それを10代半ばの少女が表現するには、無理があるのではというのが正直な俺の感想だ。
そんな俺の考えを知る由もない響は、やれやれといった具合のため息をついて「わかってないな、765プロ」と呟いた。

「765プロ……」
「うん、どうした響?」

響は不意に立ち止まって俺のことを呼ぶ。
遅れて反応した俺と響の間に微妙な距離が開く。

「楽曲っていうのは自分の色を抑えなくちゃダメなんだぞ」
「はあ?」

突然、なにを言い出すんだ?
響のいう自分の色、恐らく個性のことだろう。それを抑えなくちゃいけないって、どういう意味だ?
響は俺に向かって話し続ける。

「765プロ、自分は我那覇響なんだ。いつでも、どこでも、他の誰でもない我那覇響なんだ!」
「まあ、そりゃあそうだろうさ。響が響じゃないなら、なんだっていうんだ」
「そうだぞ……どんなことをしたって自分は我那覇響にしかなれないんだ。だから、どんなことをしたって、楽曲の中の人物にはなれないんだ。でも、自分は楽曲の中の人物にならなくちゃいけないんだ」
「それなら……響はどうやって楽曲の中の人物になるんだ?」
「……」

響にしては説明が回りくどかったので、俺は疑問を直球で投げつけて、さっさと答えを聞こうとする。
響は少しの間黙っていたが、やがて自分に言い聞かせるようにポツポツと語り始めた。


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