980:1[saga ]
2013/03/08(金) 15:13:56.85 ID:OBTKenHo0
彼は尚も左腕を振り上げ、叩き付けようとする。
さやかは身を乗り出して彼の腕を掴んだ。
しばらく病室に二人の泣き声が響く。
「動かないんだ……もう、痛みさえ感じない。こんな手なんて!」
思いを、悔しさや怒りを吐き出すように。
どんなに懸命に動かそうとしても、左手の指はピクリとも反応しなかった。
それは、さやかから見てもはっきりと分かった。
「大丈夫だよ。きっと何とかなるよ。諦めなければきっと、いつか……」
それでも、さやかは現実を認めたくなくて、嘆く恭介を見たくなくて、慰めにもならない気休めを吐く。
それでどうにかなるなんて、自分でも思っていなかった。
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