過去ログ - ほむら「Raven"S"」
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/12/20(木) 05:14:01.49 ID:9KvLHikGo
食事を摂り、レストランを出た。

技術の向上から、業務用の冷凍食品であっても、それはそれなりに美味だ。
正直、ほむらが作るよりもはるかに食える味をしている。というよりも、ほむらの料理の腕前がひどすぎるというのが先に立ってはいるのだが。

軍用レーションすらも大層美味となってしまった昨今では、彼女が敢えてその劣悪な腕前を振う必要は存在しない。

きちんとした栄養バランスさえ計算すれば、かつては賄いきれなかった食物繊維や身体機能の調節に必要なミネラル等も、コンビニエンスストアで安く購入できる簡易食糧で十分に摂取できるのだ。
故に、料亭等で美味しい食事にありつくことに価値を見いだせない暁美ほむらは、かなりの長期間"手作り料理"というものを味わっていない。

本人はそれで全く気にしていないのだが、一般の視点からすれば味気ない生活だと思えるだろう。

ちなみに、彼女の夕食は鯨肉のステーキと、シーフードスープ、夏野菜のナポリタンだった。

かつては物議を醸していた鯨の資源利用も、今ではそれに疑問を持つ者すらおらず、世界のスタンダードな食糧品の一つとして数えられている。
なにしろ鯨というのは肉から骨から血液までも無駄となる部位が存在しない、極めてエコロジカルな水産資源なのだ。
世界の食糧資源がいよいよ枯渇すると、それまで威勢の良かった環境テロ屋があっという間に手のひらを返し捕鯨利権獲得に奔走し出したのは全世界の物笑いの種となったものだ。

久方ぶりのまっとうな食事で、ほむらはご満悦といった(しかし傍から見てもそれとは分からない程度の些細な)表情を浮かべる。
胃に血が行って判断力が鈍るのはもっぱら御免だが、たまには、こうやって満腹感に浸るのも悪くはないだろうと、ほむらは思った。

胃袋にずっしりと詰め込まれた食物の重量感を感じつつ、上機嫌で街を行く。東京の夜は未だ暑いが、魔法少女の特異な身体は既に順応を始めており、直に苦も無くなるはずだ。

派手なネオンや街頭に包まれた東京の繁華街は、高伝導性の伝達媒体と低消費電燈によって、21世紀前半と比べて十分の一に満たないエネルギーで当時の数倍は明るい。
しかしそんな衛星写真にばっちりと写るような明るさの東京で、暁美ほむらは一つの違和感を感じた。

それと断定するまでもない。魔獣の発する瘴気だ。

全世界に共通して、魔獣たちは薄暗く湿っぽい路地裏や廃墟に好んで潜む。
当然こいつらも同様で、その負のオーラ――視覚に映るほどに濃い瘴気は、薄汚れた、いかにもチンピラがたむろしていそうな裏路地の一角から発せられていた。

煌々と光る街から、まるで切り取られたかのように暗く口を開くその四角い穴――結界の入り口は、魔法少女でなければその異質さに気付くことはない。
知らずに酔っぱらって入り込んだ仕事帰りのワーカーは、その時点で帰らぬ人となる事が決定されるだろう。
まさか科学万能主義万歳なこの世の中で、そんな意味不明モンスターがこの大都会に棲んでいるなど、誰も想像しはしない。

ほむらは、ホテルへと向けていた踵を真逆に返し、その真っ暗な路地裏へと歩を進めた。
なんであれ、魔獣の存在を知覚してこれを見逃す法はない。もしそれを見逃して誰かが死ねば、きっとまどかは悲しむだろうから。

サーチ・アンド・デストロイ。

魔獣は見つけ次第斃す、それこそが暁美ほむらのライフワークだ。

ほむらは、周囲から怪しまれないよう極力常態と変わらない足取りで、黒い路地の中へと侵入していった。


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