11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/25(火) 01:06:10.04 ID:ciVG5wjy0
「私、まだまだ頑張る。頑張れるわ。プロデューサー君とも、二度と夢を無くしたりしないって誓ったもの」
「あぁ、その笑顔があれば、まだ見ぬファンもきっと君に振り向いてくれるよ」
私の言葉に笑顔でうなずくと、瞳子さんはばいばいと手を振り、はっきりとした足取りで階段を下りていく。
瞳子さんの足音が遠ざかりあたりが静まり返るまで、私はその場を動かなかった。
ふぅと息を吐くと、言葉が無意識に口を割って出る。
「夢、か」
言ってから、改めて今の会話を振り返るとなぜだか気持ちが沈む。
自分でもおかしいと思うが、まっすぐに夢を貫き通す瞳子さんを見て自分を比べてしまっているような、そんな感じだ。
羨望と嫉妬をないまぜにしたようなもやもやした気分。自分自身、ひいては自信というものが揺らぐような不安が、心の内に顔を覗かせた。
「アイドルというのも皮肉なものだ。夢を届ける側にありながら、誰よりも夢を失いやすいだなんて……」
しかし、何を考えたところで現状は変わりはしない。
自信を持って仕事に取り組み100%以上の成果を出して、ただ一つ一つの結果を積み上げていく。
これだけは、前の仕事の時から貫いてきた、プロとしての私の、信頼に足る信条であり方針だ。
これだけは、決して間違っていたことはない。 ……そう思うと、胸のつかえもやがて消えるようだった。
「フフ……まったく、アイドルとしても……ついでにサンタとしても、まだまだ私は力不足だな」
瞳子さんとの会話を思い出すと、冗談のつもりで言ったサンタが思いのほかアイドルと重なって見える。
なにせこうして悩んで夢をすり減らしているうちは、アイドルにせよサンタにせよ、人に配ってなお有り余るような夢なんて持てるはずがないのだから…… そうひとりごつと、不思議と気持ちが落ち着いた。
これが瞳子さんの言う『夢』の補充になっているのかは微妙なところだったが、なんにせよ複雑な思いにケリをつけられたのは確かである。
ため息混じりに浮かんでくる自嘲的な笑みを抑えつつ、私は残る数部屋の確認へと戻った。
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