過去ログ - オッレルス「……」フィアンマ「…安価で、お前をまともにする。したい」
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182: ◆2/3UkhVg4u1D[saga !red_res]
2013/01/06(日) 03:44:13.08 ID:moyAIJB70


根城としている場所に攪乱・隠蔽の為の術式を施しながら、中に入る。
失敗を先んじて伝えたからだろう、マリアンはトールや投擲の槌と共に引き上げていた。
『素体』はどうしたのか知らないか、マリアンが持っていったのかもしれない。
どれだけ酷使しても壊れない、死なない『材料』は、興味深かっただろうから。
だが、最早そんなことはどうでもいい。オーディンが一心に考えていたのは、フィアンマが死んでしまわないか、どうか。

「フィアンマ、まだ意識はあるか?」
「…どうにか、な」

返事をしているが、その声量も低い。
オーディンは自らが所有し得る全ての霊装や知識を使って、彼の身体を治そうとした。
その間にも、血液はどんどんと溢れ、床を汚していく。

「……、」
「…しな、ないでくれ…まだ…」

声が、震えている。
泣きそうな声だ、とフィアンマは思った。
最初に会った時は、人間味の欠片も無かったクセに。
自分の作った食事を口にして、自分の意見に反応して。
段々と人間味を取り戻していった辺り、もしかすると、この男には、誰か隣に居てやる人間が必要だったのかもしれない。
幾度も暴力を振るわれたが、その度に泣いていたように思う。
多分、執着と好意がイコールになる性格をしていたんだろう。

意識がぼやけていくのを感じながら、そんな事を思った。

「…一つは、達成出来た、か。お前を、まともに…できた…」

世界を壊す事は、救う事は、出来なかった。
あの日、嫌われてしまった友人に『ごめんね』とも言えなかった。
だが、この男を真っ当な感性の持ち主には、出来たらしい。

「……、…」
「…まだ、困る。…君に死なれると、…困る…」
「…何も、…困らんだろう。…元の生活に…戻るだけじゃ、ないのか…?」
「…俺は、君に生きる理由を貰ったんだ。言っただろう、君が死んだら、俺も死ぬと」
「……そう、だったか…? …俺様は、お前に生きる目的を、貰った」

嗚呼、思い出せない。血液が足りない。
思考出来る程の余裕が、無い。

血まみれの手が、視界の端で懸命に動いているのが見えた。
だが、最早生きられないことを、フィアンマ自身は知っている。
今から病院へ駆け込んだところで、きっと助からないだろう。
何せ、貫通してしまったのだから。内臓は滅茶苦茶だ。

そっと、手を伸ばす。
そして、悪あがきをする、彼の手に触れた。
精々が数時間の延命行為。どのみち、死に至る。
手首を掴んで、首を横に振る。

「もう、…いい」
「…何が、」
「…どうせ、助からない」

だから、もういい。



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