106:>>97 続き 杏子編 ◆KbI4f2lr7shK[sage saga]
2013/06/02(日) 18:16:42.11 ID:R2hTFa990
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ザーザーと雨の音がする。
「―――なぁー」
雨音に紛れて、小さな猫の鳴き声が聞こえてきた。
心なしか頬に湿り気のある、ザラザラとした感触を感じる。
薄暗い橋の下、ダンボールを敷いて昼寝をしていたあたしは目を覚ます。
すると、小さな黒猫があたしの頬を舐めていた。
そっと身体を起こし、傍にいた黒猫を撫でてやる。その身体は湿っていた。
「はははっ」
気持ちよさそうに目を瞑る黒猫。その様子は誰かに彷彿としている。つい笑いを零した。
黒猫から手を離して橋の外を見る。打ち付けるような雨粒が橋下にまで入り込もうとしていた。
吹いた風の寒さに身を震わせる。今日は冷え込むようだった。
今日はやけに寒いな。
そんなあたしの思いを知ったかのように、黒猫が擦り寄ってくる。
ぴたりと身体を胡坐を掻くあたしに密着させて丸まった。
……ほむらのやつ、体調崩していないといいけどな。
あたしがナースコールをしたあの後、ほむらは熱を出したそうだ。
次の日、見舞い行ったマミの話によると、そこでも体調が悪いのに誤魔化そうとしていたらしい。
やっぱりこれも不眠が原因だったので、寝かせようとしたが聞こうとしなかったようだ。
このままだといつまで経っても復調しないので、無理矢理寝かしつけたとのこと。
あまりにも酷い様だったら睡眠薬の投薬も視野に入れる必要があるとまで言われているそうだ。
ちらりと黒猫を見ると、欠伸をしてから眠りに就こうとしていた。
ほむらもお前みたいに眠れたらいいんだけどさ。
黒猫を起こさない様に気を付けながら、脇に置いてあった袋から菓子パンとジュースを取り出す。
猫の温もりを感じつつ、あたしは飲み食いしながら橋の外を眺める。
いつまでそうしていただろうか……。
暗い空が更に暗さを増し、もうすぐ夜になるだろうという時間帯になったとき変化は訪れた。
寄り添って眠っていた黒猫の耳がピクリと動く。
のろりと立ち上がったかと思うと、逃げるように去って行った。
それと同時に逆方向から地面を踏む音が近寄ってくる。
じっと見ていると、そこから傘を差した見滝原中学校の生徒が雨の中から現れた。
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