219:杏子編第四章 ◆KbI4f2lr7shK[sage saga]
2013/07/28(日) 00:37:18.63 ID:/KE04hO/0
「あれ?あたし自己紹介まだだっけ?」
さやかも同じこと考えたのか首を傾げた。
ほむらが目覚めたときはさやかも部屋を覗いていた。あの日聞いたバイオリンはさやかの幼馴染が屋上で弾いていたとのこと。
その関係でほむらのことが瞬く間に伝わったようだった。
あと、さやかがほむらと一度廊下で逢ったようなことを言ってた気がするけど……多分この様子だとほむらは覚えてないな。
ほむらが眼鏡をかける前の話だし、まともに見えていなかっただろう。無理もないか。
「は……はい」
「ハハ……。それはゴメン。あたしは美樹さやか。よろしくね!」
後ろ手で頭を掻きながら歩み寄ったさやか。そっとほむらに手を差し出した。
「あ……暁美ほむら……です。よ、よろしくお願いします」
躊躇いつつも、ほむらはきちんと握り返した。
「美樹さんは暁美さんと同い年なのよ」
マミが情報を付け加える。そうか。マミの一つ下なんだから当然さやかとは同じ学年になるわけだよな。
「そ……そうなんですか?」
「ええ」
マミの微笑みにほむらは警戒を緩める。チラリとあたしの方を見るので頷いてやると、小さく息を吐いていた。
「そういえば、これどこに置けばいいの?」
さやかが重そうな手提げを持ち上げる。覗き込むと分厚いファイルが数冊入っていた。
「えと……何でしょう?」
尋ねられたほむらが首を傾げている。
「うちの学校の試験の過去問。マミさんに問題集頼んだって聞いて。友達にリストアップしてた子がいたから……コピー貰って来たんだ」
友達。その単語で一瞬だけさやかの表情が固まる。……仁美とかいうお嬢様か。
切欠があればどうにか話しかけれる程度には立ち直って来たらしい。それでもまだ、吹っ切った訳じゃないか……。
「え?そこまで?何だか……ごめんなさい」
ほむらは恐縮しきっている。初対面の相手にそこまでさせたのが申し訳ないんだろう。だけどそこで謝るのは間違いだ。
「こら。そういうときは『ごめんなさい』じゃなくて『ありがとう』って言ってやんな」
拳を作ってほむらの頭を軽く突いた。
「あ……はい。ありがとうございます」
ほむらは気づいたように顔を上げ、笑顔で礼を言いながら頭を下げる。手提げはさやかからマミへと手渡されていた。
「う、うん。どうしたしまして」
ほむらの態度の変化に目を見張っていたが、さやかは照れたように笑った。もう大丈夫だな。そう判断してあたしはそっとほむらの傍から離れた。
「そうだ!CD持ってきたんだけど。クラッシックとか聴く?」
「は、はい」
さやかが話題を振って、ほむらがそれに応える。主導権をさやかが握ることで、二人の対話はそれなりに弾んでいた。
あたしだとゲームとか、サバイバル生活とかになるし。マミは何かと世話焼きが過ぎて、ほむらの身の回りのことが多いし。
それを考えるとさやかの話は新鮮だろう。
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