過去ログ - ほむら「あなたにもう一度」
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230:マミ編第一章 ◆KbI4f2lr7shK[saga]
2013/09/02(月) 20:37:01.73 ID:iPd1pK4f0
 ****第一章

 ある日のこと、新しい家族が増えると聞いた。
 両親の友人の娘で年齢は私の一つ下。生まれつき心臓が弱かった彼女は手術を終え退院するらしい。
 しかし彼女の両親は仕事で飛び回っており、面倒を見るのは厳しい。
 だから代わりに我が家で経過を見守ることにしたそうだ。
 突然のことで困惑し、最初は複雑な気分だった。
 でも私の妹のような存在になるって言われたことで、一人っ子の私は期待に胸を膨らませるようになった。
 そうやって待ちわびたその日、本人を目の前にして私は困惑したのだった。

「今日からしばらくこの家で暮らすことになった、暁美ほむらちゃんだ」

 両親が連れ帰ったのは、長い黒髪を三つ編みのおさげにした少女。こちらを見る目つきが厳しく、睨んでいるようにも見えた。
 初対面でこれだと先が思いやられそうね……。そう思った矢先のことである。

「あ……暁美、ほむら……です。……よろ……し……く」
 緊張しているのか、気が弱いのか。少女はおどおどとしていた。
 挨拶も最後の方は小さすぎて聞こえなかった。
 口の動きからして「おねがいします」と続けたのは何となく読み取れたのだけれど。
 敵視されたわけじゃないと知って安堵したものの、今度は違う意味で心配になる。私は内心で溜息をを吐いた。

 当時、私の周りには人見知りするタイプが居なかったので、どう対応するべきか分からなかった。
 だからといって見守る両親を頼るわけにもいかない。私の方がお姉さんなのだから、ここは私が頑張らないと……。

「巴マミです。よろしくね、暁美さん」

 そう言って、私は笑顔で握手を求めてみる。暁美さんはじーと差し出された手を見詰めていた。
 ダメかしら……。不安になって手を下げようとした時、暁美さんはおずおずと私の手を握り返してくれた。

「よろしくお願いします。……マミさん」

 暁美さんが少し緊張の解けた笑みを零した。花の蕾が開いたような、可愛らしい笑顔。それを見た瞬間私の中にあった不安は跡形なく吹き飛んだのだった。

「ええ!」

 私も自然に頬が緩んだ。
 これからこの子と一緒に暮らすのだ……そう思ってワクワクした。
 朝一緒に登校して、家ではお茶や勉強を一緒にする。
 休日に出かけるのもいいだろう。暁美さんが良いのなら、昼休みや放課後だって出来ることは沢山ある。
 病院の外で過ごすのは久しぶりだというのだから、暁美さんは些細なことで一喜一憂するに違いない。

「でも……これから一緒に暮らすんだから、まず敬語は辞めようね? ほむらちゃん」

 私の言葉に、ほむらちゃんがキョトンとする。それから「頑張ります」と笑った。

 うん。私たちは家族になれる。姉妹のように仲良くなれる……そう思えた。
 そう思っていたのに……現実は厳しかった。



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