231:マミ編第一章 ◆KbI4f2lr7shK[saga]
2013/09/02(月) 20:39:24.06 ID:iPd1pK4f0
これから共に過ごす新しい家族との交流会。それを兼ねて外食に向かう途中に起こった交通事故。
周囲は火に包まれ、正面からの衝突によって車の前方は瓦礫に。両親の座席は面影も残らない。
私たち子どもは後部座席に居たから即死を免れたという、悲惨な事故だった。
「ほむらちゃん」
全身の激痛を我慢して、隣に座っていた少女を引き寄せる。私以上にその身体はボロボロで、呼吸も弱弱しかった。
「ほむらちゃん……っ!」
胸に抱いて呼びかけても反応は無い。それどころか、呼吸は弱くなっていくばかり。抱きしめる腕の力が強くなる。
「誰か……だれか助けて」
目の前の命が消えていく。その心細さと恐怖に私は涙が零れ落ちた。両親を喪っているのに、胸の中の少女にまで置いて逝かれたくない。
〈巴マミだね〉
突如掛けられた、頭に響くような声に驚いて涙が引いた。身体が軋むのを我慢して、頭を上げる。
白い猫のような不思議な生物がそこに居た。キュゥべえという名前だそうだ。
キュゥべえは私が契約して、魔法少女になれば私たちが助かると言う。逆に言えば、無契約で助かる術はない。
救出は遅くなるし、そもそもそれを待てるだけの時間が私たち二人に残されていない現状を、キュゥべえは突きつけた。
選択肢なんて無かった。それでも構わない……助かるなら。私はキュゥべえと契約して魔法少女になったのだ。
結果だけ言えば、私たちは生きることが生き残ったわ。だけれど、ほむらちゃんは……暁美さんはずっと眠り続けている。
お医者さんによると、身体的損傷は殆ど無くて、事故の悲惨さから考えれば良好らしい。
私の祈りは暁美さんの身体を癒すことは出来ても、意識までは及ばなかった……そういう事なのかもしれない。
私は……彼女を助けることが出来なかった。
「マミちゃん。いつもありがとうね」
暁美さんのご両親に礼を言われるたびに胸が痛む。今の私にできることは、見舞い、語りかけることだけだから。
私の両親が起こした交通事故が原因で眠り続けているのに。私の祈りは彼女を救えなかったのに。どうして私が礼を言われるの……?
「いえ。私が望んでしていることですから」
私は感情を抑えて笑顔を取り繕う。
事故で両親を喪った後、暁美さんのご両親が後見人となってくれた。
おかげで私は今も両親と過ごした部屋で暮らしている。生活費も大分負担して貰っていることだって知っている。暁美さんのご両院に私はとても感謝していた。
暁美さんのご両親は相変わらず忙しそうで、私が週数回暁美さんの病室に出入りしていても会う機会はあまり無い。
多分病院の人にでも私の様子を聞いているのだろう。暁美さんのご両親は会う度に、心配げに私を見ていた。
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