232:マミ編第一章 ◆KbI4f2lr7shK[saga]
2013/09/02(月) 20:41:42.03 ID:iPd1pK4f0
〈マミ〉
病院から出たタイミングで現れたキュゥべえが私の肩に乗る。
〈何かしら?〉
軽く周囲に人が居ないのを確認してから、キュゥべえの頭を撫でた。
キュゥべえって普通の人には見えないから、以前ギョッとされたのよね……。
〈暁美ほむらは何者なんだい?〉
私の眉が寄る。キュゥべえが暁美さんに興味を持つとは思わなかったから。私の祈りに対して目覚めなかったことに首を傾げても、それだけだったのに。
〈特に何も知らないけど……それはどういう意味かしら?〉
先天性の心臓の欠陥以外に特筆することは無いと聞いている。その心臓も顔合わせをした時点で治療済だった。
そもそもキュゥべえがそんなこと知りたがるかしら? 質問の意図が分からないわ。
〈事故後、暁美ほむらの因果が急激な増加を続けている。今では以前の数倍に膨れ上がっているんだ〉
〈え? 因果ってそんなに増えるものなの?〉
魔法少女の素質になる因果。どれだけ世界に影響を及ぼしたか……そういうものでなかったか?
眠っているだけでそんなに変化するものかしら?
〈普通は無いね。一国の女王でもそこまで大きくは変動しない。ここまで規模が大きいのは前例が無いよ〉
思った以上に異常だったみたいね……。
〈暁美ほむら自身に要因があるのは確かだ。だけど引き金になったのはおそらくマミ、君の祈りだろう〉
〈……え?〉
私は思わず目を開いて肩に居るキュゥべえを見る。私の祈りがどうして?
〈君の祈りは命を『繋ぎとめる』ことだった。もしその祈りが無ければ、暁美ほむらは生を終えていた筈なんだ〉
そう……私はキュゥべえに私たちを助けてほしいと願った。確かに『命を繋ぎとめる』祈りと言えるわね。
そしてその契約が無ければ、暁美さんは間違いなくあの場で命を落としていた。
〈その際に他の因果、例えば『異なる時間軸の暁美ほむら』の因果を『この時間軸の暁美ほむら』に『繋いだ』とかは考えられないかい?〉
もっともただの例でしか無い、とキュゥべえは繋げた。この一例に挙げたのも、因果が繋げられる可能性としては似て非なる存在が一番高いという判断の元らしい。
〈……ありえるのかしら……そんなこと〉
私は他の時間軸に干渉したり、因果を増やすような祈りをした訳じゃないわ。
私以外の誰かが暁美さんに干渉した? いえ、それならキュゥべえが言及するでしょうし……。
キュゥべえに把握できない範囲での干渉と言うなら、他時間軸ぐらいしかない……ってことよね。
〈現状からは何とも言えないね。君自身には影響が見られないし、暁美ほむらに主な要因があると考えた方が良さそうだ〉
『命を繋ぎとめる』祈りをした者自体は少なくないが、今回のような事例はなかったようだ。
暁美さんだけが要因なら、事故を境に因果が増加したのは説明ができないし、私の祈りによって何かしら作用したと言うのは妥当である。
そうなると今度は暁美さんの因果の量が気になるものだ。
〈そういえば、暁美さんの因果って今どのくらいかしら?〉
〈説明するのは難しいよ。君たちが知ってる範囲になると……そうだね、ジャンヌ・ダルク相当ってところかな〉
予想外の単語に私の動きが止まった。
ジャンヌ・ダルク――十五世紀に活躍した聖女。僅か十九歳で処刑されるまでに武将としても、託宣を告げる者としても活躍した少女。
そんな歴史上の人物に相当する因果を暁美さんが持っている? 私は顔を青ざめた。
〈暁美ほむらは異例尽くしだね。この様子なら、まだ目覚める可能性もありそうだ〉
言うだけ言って、キュゥべえは去って行った。
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