4: ◆2gMnW4GmGpwP[saga sage]
2012/12/31(月) 03:55:43.95 ID:gMATEm4b0
「……鹿目さん」
傍から掛けられた声に、わたしはようやく自分以外の存在に気がつきます。
意識を向けると、そこには一人の少女が立っていました。
赤縁眼鏡に黒いカチューシャ。長い髪を三つ編みお下げにして、紫のリボンで抑えています。
服は少し変わっていて、白とグレーの布地の、アニメに出てくるような制服デザインをしています。
でもそれ以上に異質なのは左腕に着いている円形の小さな盾です。
そう…彼女はかつてあった世界の、暁美ほむらという少女でした。
「…久しぶり…ですね」
少女は手を伸ばし、そっとわたしを両手で包み込むように引き寄せます。
「…鹿目さん…」
まるで大切なものを見つけたかのように少女は優しく微笑みかけていました。
鹿目まどか――かつてわたしだった存在です。
ですが、それはもう遠い世界のことで、わたしにはもう実感の湧かない名前でした。
そんなわたしの様子に気づいたのか、少女の微笑みに陰りが差します。
「…自我が消えちゃったんだね…」
とても悲しそうな声です。わたしを胸に抱き寄せた体は震えていて、泣き出しそうになるのを我慢しているようでした。
でも、今のわたしにはそんな少女の想いも響かないのです。
『どうしてここにいるの?』
少女の悲しみを他所にわたしは疑問を問いかけます。
ここは宇宙のどこでもない場所です。
どうやらどの時空からも切り離されているようで、概念のわたしですら仔細が分かりません。
暁美ほむらという少女には、こんな能力は無かった筈なのですが…。
「ごめんなさい…それは言えません。私の役目じゃないから…」
すこしだけ体からわたしを離し、申し訳なさそうに少女は頭を下げます。
『…そっか…』
この少女がそう言うなら、深い訳があるのでしょう。
わたしにも役目があり、同時に不可侵の領域もあります。
きっとそういうことなのだと思います。
『なら…あなたの役目はなに?』
わたしは再度少女に問いかけました。
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