46:恥じらい症候群(お題:シンドローム)5/6[sage]
2013/01/11(金) 22:23:37.07 ID:A+J6Pr0W0
それが、私がこの島に滞在して2ヶ月目のことだ。そして今日、私はとうとう、この島を追い出さ
れる。私の世話を焼いてくれた男は、今は麻でできた半袖のシャツに、膝までの丈のズボンを履いて
いた。
「もうしわけありません・・・。大陸の話を教えていただいただけなのに、こんなことになってし
まって・・・」
「いいんですよ。実際、この島のいままでの生活を変えてしまった責任が私にありますから。余計な
ことをしてしまったと、後悔しています・・・。それに、調査はだいたい、済みましたしね」
そう、調査は済んだ。けれど、きっと私がこの研究内容を発表する頃には、この島はごくごく普通の
島になってしまっていることだろう・・・。衣類ブームによって若者たちにわき起こった「恥じら
い」の心は、一過性のものではなく、生涯にわたって影響する獲得された感情なのだ。次に生まれて
くる世代にも、衣類文化は伝えられてしまうだろう。
私は船に乗り込み、島を去る。私と親しくしてくれた者達や、授業にでてくれていた若者達が港で
見送ってくれている。水平線に彼らが隠れてしまうまで、私は彼らの方を見続け、手を振るのを止め
なかった。
そうだ・・・。研究だけがすべてではない。全裸で過ごす民族の研究は無駄に終わってしまったか
もしれないけれど、あの島で過ごした2か月は、この上もなく、満ち足りたものだったではない
か・・・。得難い大切な思いでを、私にもたらしたではないか・・・。
夕日に赤く照らされた大海原を見つめながら、私は船で揺られる。ただただ静かで、穏やかな時間
だった。
けれど次の瞬間、大きな波のように、アイデアがうねりを上げて私の心に湧き起こった。
そのとき。
わたしは、思いついたのである。..
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